その日の夜。



新羅さんに痛み止めを打ってもらった俺は皆と一緒にリビングに集まって寿司をつついていた。何故かサイモンが特別に出張サービスで寿司を握ってくれていて、いつの間に来たのか周りには狩沢さんや遊馬崎さん、門田さんまでいてもはや何かの宴状態だ。



「おう、紀田。不運だったな」

「つか、門田さんたちは何でここに…」

「やぁだ、紀田君のお見舞いに決まってんじゃん!ね?ゆまっち!」

「そうですよぅ!紀田くんが怪我したってきいて、いても立ってもいられなくて、ねぇ!モグモグ」

「って、めっちゃ寿司食ってるだけじゃないっすか。」



全く、何なんだ今日は。あ、厄日かな。
そういや今年って厄年…あれ?違ったっけ?






「ほんと、悪かったな…」

「え、あ、静雄さん。」


ボケッと考えてたら後ろから静雄さんに謝られた。あ、何かデジャブが…(※短編:夜の1人歩きは危険参照。)



「紀田くんさぁ、ほんとドジだよねぇ。もうちょっと周囲に目を配らないといつか死ぬんじゃないの?」


「…臨也さん。」


「イザヤァ、やっぱてめぇはあん時に殺しときゃあよぉ」




次第に雲行きの怪しくなる2人を見つつ、思わずため息をつく。
元はといえばあんたが池袋なんかに来るからこんなことになるんだよ!!…とは言えず。ああもう、脱力。


サイモンは台所で寿司握ってるし、杏里と帝人はあの首なしライダーと居間でサスペンスドラマ見てるし、新羅さんは風呂だし、門田さんたちは酔っ払ってるし、
駄目だ。全員あてになんねえ。



「そろそろ決着付けようや、イザヤ君よぉ」

「全く、しずちゃんは短気なんだから。ま、今日はこれで失礼するよ。じゃあね、紀田正臣くんお大事に。」


「はぁ・・・」



そうして俺を横をすり抜ける臨也さん。

ああ、そう。そしてこれもまた一瞬の出来事だったのだ。







「愛してるよ―」


「・・・っは?!」




ボソッと呟かれたその言葉。

あまりに唐突、かつ一瞬の出来事。




予想外すぎる言葉を呟かれてどうしていいかわからず次第に言葉の意味を理解して赤くなる顔を隠しながら立ち尽くす俺。そうしている間に臨也さんはもう玄関に立っていて―、



「寿司ラブ!やっぱり寿司は大トロに限るよ、じゃあね」

「―っ、寿司かよっ!!!」


思わず突っ込んでしまったが、先ほどの言葉が自分の勘違いだったことに気づき、今度は羞恥で顔が赤くなる。



「待てこら、イザヤァアアア!!!」



臨也さんを追いかけて出て行った静雄さんの背中を眺めつつ、


ああもう、静雄さん早く殺っちゃってくれないかな。

と、願望の眼差しを注ぐ俺なのであった。







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