折原臨也
・・・やっぱり、このまま大人しく臨也さんについていこう。
そう決めた俺は臨也さんの手を握り返し、必死に走る。
「おや、手を握り返すなんて、ずいぶん積極的なんだねえ。正臣くん」
「・・・静雄さんに殺されないように、仕方なくっすよ。」
きっと上から俺を見下ろしてニヤニヤ笑ってるんだろう。容易に想像できる臨也さんの表情に顔をしかめる。
そんなやりとりを交わしながらも、走る足は止まらない。さすがいつも静雄さんと喧嘩してるだけあって逃げ足が早いというか何と言うか…。
とにかく俺は臨也さんについて走るのに、いっぱいいっぱいだった。
「はぁ〜疲れた。紀田くんコーヒー入れて。」
「ちょ…、あんたより確実に俺のほうが疲れてると思うんですけど。」
何とか静雄さんを撒いて、逃げてきたのは某高級マンションの一室。
綺麗に整頓された部屋には現在俺と臨也さんの2人だけ。
「こんな時に、波江いないんだよね〜」
「波江って…」
「ん?ああ、君は知らないんだっけ?秘書だよー秘書秘書。」
「秘書…」
「あ、もしかして紀田くんヤキモチ?」
「は?」
何故この流れでそうなるのか理解に苦しむ。
ニヤニヤしてる臨也さん。
ああムカツク
不愉快。
「選択ミスったんじゃねーか、俺。」
「何ぼそぼそいってんの紀田くん、さっさとコーヒーいれて。」
「…。」
そう言って仕事用のデスクに座って書類を広げだした臨也さんを横目に小さくため息をついて、台所にむかう。もしかして俺って尽くすタイプなのだろうか?
まあ、臨也さんに楯突くと後が怖いからな。
…あれ、何でコーヒー置いてある場所とかわかってるんだろう俺・・・。
ちょっと自分が嫌になった。
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