こんにちは、岡山県から上京してきました名字名前と言います。私は今何故か、立海付属中学男子テニス部マネージャーをしています。そうなった経緯は簡単です。田舎娘で騒がしい性格ではないからです。 ここのテニス部はイケメンの勢揃い。個性も強くて…何と言いますか、…アイドル、となんら変わらない気がしますね。ファンクラブも存在して、もう凄いを通り越して怖いです。毎日毎日フェンスに張り付いて、皆さんが素晴らしいプレイを行ったら歓声をあげて、田舎者の私には真似できませんね。そもそも部活に入部して毎日活動をすることは中学生にとっては暗黙の了解だと思っていたのですが…それは田舎だけのものだったようで、いやはや勉強になりますね。 おっと話がそれてしまいました。私は自分で言うのもなんですが、大人しい性格です。模範生と言うべきでしょうか?スカートだって規定の長さ、髪は染めるなんてしません。真っ黒で二つ括り、化粧だってしてません。校則違反なんてもってのほかです。校則は守るためにあるのです。 そんな自論を持っていたせいでしょうか。柳君に目を付けられたんですよね。 「名字さん、タオルを持って来てはくれないか?」 「あ、柳君只今持っていきます。」 柳君について考えていると丁度話しかけてきましたね。私は準備してあったタオルを一つ掴んで渡しました。 「どうだ?仕事の方は、慣れたか?」 「はい、仕事の方には慣れることが出来ましたけど…この環境にはなれませんね。いつファンクラブの方々に呼び出されてしまうかと思うと、安心した学校生活を送れているとは言えませんね。」 「それはすまない事をしてしまった。しかし、分かってほしい。俺達には騒がない、俺達に惚れない、仕事のは無い人材を必要としているのだ。全国大会三連覇に向けてマネージャーは必要になってきたんだ。後数か月我慢してほしい。」 「必要とされているのなら私は応えますよ。こうやって他人とたくさん関わる機会を下さった柳君には感謝していますよ。まぁ…男子ばかりなんですけどね。」 「女子とは…俺達はあまりよくないのだ。俺達を見世物にしている眼が俺達は苦手なんだ。」 「まぁ…柳君達は確かにカッコいいですからねー。見惚れてしまいますよ。」 「そう言えば名字さんは同学年の俺達にも敬語なのだな。タメ口でもいいんだぞ?」 「いえ…敬語は自発的に使ってしまうので、この口調は譲れません。」 譲れるわけがないでしょう。 だって…、 うち、でぇれぇ口悪ぃんじゃもん。 岡山弁はやーさん代表と言われる広島弁よりもきちゃねーと定評があるんじゃけん。実際、他県の連れからはそう言われてしもうたんじゃし…じゃろうから怖がらせんようにうちはここ、神奈川に来て岡山弁はある人を除いて封印中なんじゃ!ぼろが出ねー様に常に敬語じゃ。敬語にしときゃー方言は封印されるけんな。後は単語単語を気ゅー付けりゃーええから、よし。 「…そうか、まぁ…代わりと言ってはなんだが困ったら俺達を頼ればいい。」 「はい、そうさせていただきます。では柳君以外にもタオル配ってきますから。」 「あぁ、すまないな。」 柳君は少し負い目を感じてしまっているようです。しかし、それは仕方ないですよね。だってフェンスの向こうからは私を射殺さんとする視線がチクチク刺さってきますからね。女の嫉妬ってきょーてぇわ。あ、いや。怖いです。 私はタオルとドリンクを部員に配っていきます。いい加減取りに来ると言った行為をしていただきたいものです。 そして最後、 「はい、仁王君待たせてしもーてゴメン。」 先ほど話したある人と言うのは仁王君の事です。仁王君の方言はおかしいですけど。とても親近感を覚えます。 少し離れたところに仁王君はいつもいるから少しの距離を歩いていかなければ渡すことが出来ません。渡さなくてもいいのかもしれませんが、選手の体調を管理するのもマネの仕事、手抜きはできません。 「ホンマじゃー。喉カラカラぜよ。」 「じゃったら仁王君から取りに来てちょーでぇよ。そしたら早ぅにドリンクとタオルを渡すことが出来るんじゃけぇ。」 「そんなんしたら名字が窮屈じゃろ?常に敬語じゃったら疲れるじゃろ?」 「そうじゃけど…仁王君、いっつもお世話になっとるなぁ…こねーな田舎娘に目ぇをかけてくれてこうやってこの方言にも怯えんと関わってくれて…。」 「岡山弁に俺が怯えるとかあり得んぜよ。じゃけど…他人に使うんは止めといた方がええじゃろうなぁ…都会っ子には刺激強いからのぉ。」 「使わんようにしとるよ。大丈夫じゃから。」 「そうか…。俺としては使ってくれた方が一層面白いんじゃがな。」 「勘弁してちょーでぇ…。」 と言って何日たったでしょう。いや、何日も経ってないかもしれませんが…絡まれました。ええ、そうです。ファンクラブの方々に呼び出しを食らいました。 なんだか標準語の汚い言葉を聞いたら「おお!丁寧な悪口だ」と思ってしまいますね。 なんだか他人事の用ですよ。 「ちょっと聞いてんの!?」 とてもヒステリックです。とてもお化粧がすごいです。お化粧は校則で禁止されてませんでしたっけ?と言いますかいい加減蹴ってくるの止めてくれませんかね。痛くは無いのですけど、制服に貴女のくそ汚い上靴の足形がついてるんですよ。それでトイレとか言ってるんでしょう?きちゃねーなぁ…。 ……キレてもいいですかね。私は寛容な方だと自負してるのですが、流石に堪忍袋の緒が切れると言うものですよ。これから部活が始まってしまう時間になってしまうのに、皆さんに迷惑がかかってしまうじゃないですか。 人様に迷惑かける女子…ええ度胸じゃなぁ。きょーてぇ?上等、今あのきちゃねー言葉を使わんでいつ使うっちゅうんじゃろうか? 「なんか言ったらどうなのよ!!」 「……言うてあげらぁ。その代り耳をかっぽじって聞きぃよ?ボケどもが。うちは柳君に頼まれてマネをしとる。頼まれたんじゃ。ここ重要じゃから覚えときねぇよ。君達はうちに文句を言ー前に柳君に文句を行って来ぃよ。うちは、うちの意志で辞めれるような立場じゃねーけんな。あぁ、君たちはうちと彼らが関わることをええとせんのんだっけ?安心しねぇ。マネってそねーに暇と違うけん。雑談する時間なんてねーんじゃからな。君達がキャーキャー耳障りな声を発っしとる間にうちはもくもく黙って仕事してとるんじゃから。代わってくれるんならどうぞ?あぁ、無理じゃな。君たちみたいな校則違反の塊が伝統あるテニス部のマネになることなんて出来るわけなかろうな。そうやー…さっきうちのことブスと言った人が居ったなぁ。ブス上等。女はお化粧をすりゃー化けるけんなぁ、代わりに君達は…ハン、今の内から化粧をして将来お肌が最悪な状態になって泣き崩れて顔面整形でも行う予定じゃろうか?髪も染めよってから禿げたいんじゃぁ…それに綺麗にまとめとるんかもしれんけど、その髪形男子から見りゃぁガッソに見えるだけじゃけぇな。そうじゃ、これでなんか言うたことになるよなぁ?うち、任された仕事にゃー全力で取り組みてぇけぇ行ってええじゃろうか?このまんまじゃとテニス部の皆に迷惑をかけてしまうけんなぁ。ええよね?じゃ、失礼。」 フ…終わった平穏な学校生活。こんにちは、虐めに耐える日々。 そう思いながら部活に向かおうと死線を女子どもにから奥へとやるとそこには居て欲しくなかった顔ぶれが居た。 「…名字さん。」 「!?…幸村君、に、みんな…なんで居るんじゃ?いや、居るんですか?」 「いや…名字さんが呼び出しを受けることを知ったからすぐに駆けつけたんだけど…。」 「つ、つかぬ事をお伺いしますが…いつから?」 「ックックックックックック…初めからじゃ、残念じゃったのぉ。名字。」 「に、仁王君笑わんで!え、ちょ…。」 「名字さん、想像以上の口調だったぞ。」 「柳君っ!?」 「しかし、前言を撤回させてもらおう、標準語から逸脱しないでくれ。」 怖いから、と副生音が聞こえたりした気がします。 「ごッごめんなさぁい!!」 その後私はイジメに遇うことはありませんでした。いや、…遇った方がまだよかったのかもしれません。 だって…私が陰で姉御と男女共から呼ばれるようになるまでそう時間はかかりませんでしたから。 そねぇなキャラじゃねぇの!うちはぁ!! *** 方言の解説 きちゃねー=汚い きょーてぇ=怖い ええとせんのんだっけ=いいとしないのだっけ? そねーに=そんなに ガッソ=ぼさぼさ |