嫉妬する七海千秋ちゃんだったもの

 レストランで、ぽうっと先程休憩に戻ってきた花村くんが入れてくれた紅茶を飲んでいると、休憩なのか、七海ちゃんがレストランへとやってきた。

「おはよう」
「うん、おはよう」

 今はもう『おはよう』な時間ではないけど、今日七海ちゃんと言葉をかわすのは初めて。
 おはよう、と交わしたまま、私を見つめる七海ちゃんにどうしたの、と声をかける。

「あのね、隣、座ってもいい…かな?」
「勿論。どうぞ」

 控えめに首を傾げた七海ちゃん用にと、隣の椅子を少し引くと、嬉しそうに歩いてきた七海ちゃんはそこへと座って私にお礼を言ってくれた。

「七海ちゃんも、休憩?」
「……も?」
「うん。さっき花村くんが来たの」
「そっか。それなら、もしかして、それって」

 紅茶の入ったカップに視線を向けた七海ちゃんに頷くと、少しだけ七海ちゃんの頬が膨らむ。

「む……」
「……? 紅茶、七海ちゃんも飲む? パックでいいなら、まだ……」
「いいよ、いらない。それより……それ」

 七海ちゃんは私の手元にあったカップに手を伸ばす。わざわざ入れなくても、私の飲みかけでもいい、という事だろうか。
 でも、かなり長い時間をかけ、ちょびちょびと飲んでいたおかげでもうとっくに冷めているから……。
 そう声にする前に、七海ちゃんは私の飲みかけだった冷たい紅茶を飲み干してしまう。

 七海ちゃんは空になったカップを机に置いて、口元をやや乱暴に拭った。
 いつもの七海ちゃんからは想像ができなかった行動に固まっていると、七海ちゃんは私にどうしたのと首を傾げる。

「う、ううん。冷たかったけど……良かったの? あ、でも、花村くんの入れた紅茶は冷めても美味し、」
「ねえ」
「……?」

 言葉を遮った七海ちゃんに、またしても驚かされる。なんだか今日の七海ちゃんは少しだけ不機嫌にも見えるような、私の気のせいかな。

「わたしね、今日の割り振られた仕事は終わったんだ」
「そうだったんだ。お疲れさま」
「うん。だからね、」

 ウサミからもらったと思われるお出かけチケットを私に渡しながら、七海ちゃんは少しだけ頬を赤くした。
 私も今日はもうやることがない。……と、いうか、今日はお休みをもらって何をしようか迷って、カップ一杯の紅茶を長時間かけて飲むくらいの暇人だったわけで……。

「私と、でいいの?」
「………………」
「七海ちゃん?」
「……いい、かな?」
「うん…勿論。喜んで」

mae ato
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