■06

2009年4月4日(土)


 あの後は攻撃を止めて下すった宇賀神ミヨさん、もといミヨと、カレン(この呼び方にしろって言われたけど慣れない)……とお話をして、お友達になれた。
 入学式の疲れからか、生徒はほぼ下校し、今はもう教室に残っている生徒は少ない。
 私もいきなりこの世界に落ちてきて、数日はあったもののいきなり入学式でかなり疲れている。
 鞄に荷物を詰め込んで、忘れ物がない事を確認すると教室を出た。




「あっ、紗織!」

 下駄箱で靴を靴を履いていると、突然背後から声を掛けられ、またもや変な声が出そうになった。

「あっ、あぁ! ごめんね、また驚かせちゃった」
「カレンさ、……カレン」
「ちょうど良かった、ねね、こっち来て!」

 靴を履きかけにも関わらず腕をひっぱられ、片足で飛びながらもなんとか靴を脱いでついていくと、そこにはミヨ…と、見知らぬ美少女。

「ふふ、この子。同じクラスの石倉紗織ちゃん。バンビも仲良くしてあげて!」
「うん! よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いしま……」

 にこっと花のように微笑まれ、つい釣られて微笑んで返事をしている途中でハッと時が止まる。

(え? バンビ? バンビって言った?)

 バンビと呼ばれた超絶美少女に笑顔を向けたまま固まる私の顔を、心配したようにカレンが覗き込む。
 ミヨも小首を傾げて不思議そうにしている。

「……ご、ご、ごめんちょっと考え事してた」
「そ? ならいっか。仲良くしようね!」
「カレン。バンビじゃ紗織がわからない……」
「ハッ! そ、そうだった!」

 ミヨの的確な突っ込みに、大袈裟な反応をするカレンを見て小さく笑って、私を見つめる、バンビ。さま。

「ふふっ。わたしは花結つかさ、よろしくね、石倉さん」
「は、はいっ……改めてよろしくお願いします、バンビさ…花結さん!」

 差し出された白い手をなるべく壊さないようにやわく握って頭を下げる。
 側から見たらプロポーズをする男性のようにも見えないことはないだろう。

「二人とも初々しいですなぁ」
「カレン……」




 それからは、カレンにずるずると喫茶店に引きずられていき、四人で話し込んで、結果的に家に帰り着くのは外が暗くなってからになってしまった。
 帰りに食材を買おうとスーパーに寄って、値札に何リッチなんて書かれていた時はその場で倒れそうになったものの、どうやらお金については現実と根は変わらないらしくなんとか買い物は済ませることができた。

 夕ご飯もお風呂も済ませた私は、ベッドに倒れ込むように寝転んだ。
 少しもたたないうちに睡魔が私を襲い、気付けば敷き布団と掛け布団の隙間に入り込むのも忘れたまま眠りに落ちていた。










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