幼馴染と初詣 三人の幼馴染


 ピンポコ ピンポコ

 玄関の呼び鈴を二度押され、部屋中に鳴り響く呼び出し音にベッドから飛び起きた。
 バタバタと階段を駆け下りて玄関へと向かっていると、早くしろというように更に押される呼び鈴、鳴り響く呼び出し音。

「ハイハイハイハイ!! ハイ!! ハ……」

 必死に返事を返しながら荒々しい手櫛で髪を整えて玄関を開けると、白い息を見せつけるように吐き出す聖司くんが私を見上げていた。
 その光景に目を丸くさせて固まっていると、聖司くんは『おい』と一言。

「おはようございます……」
「来たぞ」
「はい。……はい。はい?」

 首を傾げる私に小さく頭を下げた聖司くんは、ほどけかけていたマフラーを巻き直して玄関を登ってくる。

「え?」
「あけましておめでとう」
「あっ……うん、おめでとう! うん?」

 おめでたいけど聖司くんがここにいる意味がわからないんだぜ?
 疑問が晴れずに首を傾げて斜めになったままの視界。聖司くんの顔がいつもより傾いて見える。

「あ……上がっていく? 寒くない?」
「車のほうが暖かいからいい。それより着替えて来い。なんでこんな時間にまだパジャマなんだ」

 聖司くんから言われてはっとする。
 そうだ、私、寝起きのまま出てきたんだ。
 自覚すると外から玄関に入ってくる風がとても冷たく感じて体が震える。
 聖司くんに『ちょっと待ってて』と言い残した私は、バタバタと自分の部屋に駆け上がって慌ただしく着替えを始めた。





「お……おまたせっ」
「ああ。待った」

 むっすーとした聖司くんに両手を合わせて謝る。
 新年早々、なんで聖司くんに謝ってるんだろう……。

「あれ……聖司くん、鼻の頭赤くなって……」
「っ…… 行くぞ」
「も、もしかして……ずっと外で待っ」
「うるさい! おいていくぞ」

 むすっと更に顔を赤くして私に背を向けて車へと向かう聖司くんの後を付いて家を出た。





「セイちゃんおかえり〜。雪子ちゃんも、いらっしゃーい」
「あ、あれ? 琉夏、くん?」
「そう。琉夏くん。コウもいるよ」

 相変わらず大きくて乗り慣れない聖司くんの車に乗り込むと、にっこりとこんな寒い時期でも暖かな笑顔を向ける琉夏くんが出迎えてくれた。
 琥一くんは私を見ると、小さく手を上げて振ってくれる。

「よぉ」
「わ……久しぶりだね! 二人とも」
「そうだね。セイちゃんと雪子ちゃんが高校生になっちゃったから、なかなか会えなかったもんね」
「そうだね……あっ、あけましておめでとう!」
「おう」
「うん、おめでとう。今年もよろしく」

 しばらく会えることの出来なかった幼馴染と緩く挨拶を交わしていると、突然背後から腕を引かれ、私は聖司くんの隣の座席に倒れこむように座らされる。

「わ、っ」
「いつまでも立ってたら出られないだろ」
「そっか、ごめんね?」
「今のはセイちゃんのヤキモチだと思うな〜? どう思う、コウ」
「あぁ、あの顔は立派なヤキモチだな」
「うるさい! 降ろすぞ!」

 眉を顰めて私から顔を逸らす聖司くんを茶化していた琉夏くんと琥一くんは、私に視線を向けて『そういえば』と声を出した。

「セイちゃんとはちゃんとお付き合いしてるの?」
「うん、もちろんだよ」
「わぉ」
「お、おい!? 何言ってるんだ!」
「えっ?」

 慌てたように少し腰を浮かせた聖司くんが不思議で見上げると、聖司くんはふん、と鼻を鳴らして座席に深く座りなおす。
 琉夏くんは満面の笑みで私と聖司くんを見つめ、琥一くんはにやりと含みのありそうな顔で私たちを見つめる。

「えっ、え……ち、違うの?」
「違うって……違っ……うことは……いや、」
「え、…………あっ」

 なんだか挙動不審で真っ赤な顔の聖司くんを見つめて理解をする。
 琉夏くんの【お付き合い】って、恋人としてって意味なんだろう。その答えに頷いたってことは、私は嘘を付いてしまったことになる。

「違うよ! 聖司くんとは幼馴染だし、お友達だよ」
「うわっ……それもちょっと……ね?」
「残念だな、セイちゃん」
「セイちゃんって呼ぶな……」
「ええっ……」

 本当のことを言ったのになんだか微妙な反応をする琉夏くんと琥一くん、聖司くんにどうしていいか困ってしまう。
 なんとか言葉を捻り出そうとしていると、車はゆっくりと減速してやがて動かなくなり、執事さんらしき格好の男性によって扉が開かれる。





「ふぅ、着いた!」
「……おぉ、やっぱ人は多いな」

 着いた先は神社。どうやら私は初詣に行くために車に乗っていたようだ。
 それに、お正月なこともあって、琥一くんの言ったとおりかなり人は多い……下手をすると全員バラバラになりそう……というか、なる。高確率で。
 不安だなあ、とたくさんの流れていく人を見つめていると、琉夏くんは一つ伸びをして自分の手に手袋をはめると、私にひと組の手袋を差し出してくる。

「急いできたから持ってきてないでしょ。よかったら、使って?」
「いいの? ありがとう。使わせてもらうね。でも琥一くんと聖司くんは……」
「コウは体おーっきいから多分大丈夫。セイちゃんはマフラーがあるから大丈夫……かな?」
「疑問形だね? うーん……」
「どうせ、その手袋入るのは雪子ちゃんだけだから、使ってくれる? あと、遅れたけどクリスマスプレゼントってことで……ついでに貰って?」
「え? ……そっか。うん……ピッタリだ。ありがとう!」
「おい、何してるんだ。行くなら早く行って早く帰るぞ」
「あ、うん!」

 少し離れたところから聖司くんに呼びかけられ、私と琉夏くんはそちらへと歩いていく。
 人が多くて、なかなか前に進めそうもない。聖司くんは琥一くんの背後に隠れるようにして歩いている。琥一くんがなんだか、聖司くんの騎士とか……じゃなかったら、盾みたいに見えてすこしおかしい。


 なんとか通れているけど、人の波がすごくて押し流されそうで、私の中の不安は更に大きくなっていた。
 もしかしたら私だけはぐれる可能性もあるかも……。

 誰かに頼ってみようかな……?

 01.琉夏くんの手を握る
 02.琥一くんの服を掴む
 03.聖司くんに近寄る
 04.一人でなんとかする


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