「私と鳳くんどっちが大事なの!」

ちあきからそう告げられたのは数分前の事。ダブルスを組む長太郎と俺は作戦会議…まあ、ただの雑談をしていた。そんな俺達にちあきはズカズカと歩み寄り冒頭の言葉を叫んだ。

「そんなの、長太郎に決まってんだろ?」
「し、宍戸さん…そんな言い方、」

「あっそ!だったらもう私はいらないよね?せいぜい鳳くんとお幸せに!」

ちあきが吐き出した言葉にため息を吐く。そんな俺を見て慌てる長太郎とふん、と拗ねたように俺の元から走り去るちあき。

「…宍戸さん」
「ごめんな長太郎。ちょっと」
「あ、…はい」

ちあきが走り去った方向に向かおうとする俺に小さく手を振る長太郎を安心させようと一つ笑いかけた。



「ちあき」

中庭のベンチに座っているのを見つけると俺はそこに駆け寄った。だがちあきはベンチから立ち上がり俺から逃げるように走り去ろうとする。そんな事は毎回の事で、そのまま逃がすわけも無い。

「離して!」

俺に掴まれた腕をぶんぶんと振るちあきを引き寄せて抱き締める。と同時におとなしくなるちあきに笑みが溢れた。

「ちあき、好きだぜ」
「っ…嘘」
「ホント」

自分の手を握りしめて口から言葉を捻り出すようなちあき。背中を撫でてやれば息を吐いて背中に腕を回してきた。素直じゃないやつ。

「ちあきと長太郎へ向ける大切はどっちも違うんだよ、俺とおちあきの恋人に対しての思いも」

ちあきはどこでも恋人みたいにしてなきゃ落ち着かない、愛されてるって感じないんだと思う。それに対して俺は二人きりの時に同じ気持ちを共有出来れば安心出来るタイプで。

「正反対かもしれねえけどさ…俺はちあきが誰より好きっつーのは本心だぜ?」

抱き締める腕が強まる。頭を撫でてやればちあきは俺のジャージを掴んで離さない。

「私も」

一つ間を置いて小さく聞こえてきた声に安堵のため息が漏れた。

「言い訳クサい」
「うるせえよバーカ」


(title::確かに恋だった様より)





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