「桜庭さん?……寝てるんだ」

不二くん。

「……」

起きてる、なんて言えない。


カタ、と音がし、前方に人の気配。
不二くんだってことはわかってるんだけど、多分私、今顔真っ赤だ。
机に突っ伏して上げることの出来ない顔。狸寝入りだとバレないようにするために息を殺す。

微かに、不二くんの笑い声が聞こえ、その直後に私の頭にやってくる暖かな感触。

…撫でられてる。

そう理解するのにもそう時間はかからなくて、耳も多分真っ赤になってて、…どうしようどうしようって考えてもいい答えは浮かばず、もういっそのこと寝てないよってネタバレしちゃおうかな、ってくらいで。

「……今なら言ってもいいかな」

そう聞こえると、私の耳元にかかる吐息。頭にたくさん浮かぶはてなマーク。ふよふよと飛んで回っているうちに、不二くんの声、

「……好きだよ、ちあきさん」


……は、っ

今だけはいつも、素直に言葉を出せるタイプじゃなくて良かった、って思っちゃったり。

なんてね、と頭上から聞こえ、その後にまた、聞こえてきた不二くんの笑い声。でも今度は少し抑え気味に、笑ったのが不思議で。

あれは嘘?それとも本当?

「ごめんね、桜庭さん。…好きなのは本当」

再び私の頭を撫で、耳元でこっそり、おはよう、なんて呟いていく不二くん。教室のドアが閉まる音を聞くと、私は、

「……、  」




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