「ねー、白石って童貞なん?」
「っ、ぶはっ」
「うっわきたない!」

白石は何気ないあたしの問いに勢い良く飲みかけのフルーツオレを噴き出した。それが書きかけの日誌にポタポタ落ちて、慌ててタオル取り出して拭いてた。思いのほかいい反応だ。ゲホゲホいっててウケる。

「なまえちゃんなにいきなり…やめてそういうのホンマ」

白石は涙目になりながら手の甲で口元を拭った。だから、そういう仕草がエロいんだって。

「で、どうなん?」
「…なんでそんなこときくん」
「モテんのに浮いた噂ないから気になっただけ」
「はあ…」

そうなのだ。
白石はイケメンだし、誰にでもやさしいし、存在がエロいし、何よりあのテニス部の部長だから、めっちゃモテる。
こうして時々日直でペア組んだりしなきゃたぶん仲良くなることもなかったと思うくらいいっつも女の子に囲まれてる。
のに、彼女が出来たって話は聞いたことない。

「うーん、まあ今はテニス一筋やからなぁ」
「じゃあやっぱ童貞なん?」
「だからそういうのやめいって」
「ねーどうなん」
「あんなぁ…」
「ほれほれ答えてみー」

面白がって煽ってたら、白石はすんごい呆れた顔してあたしの頭を包帯ぐるぐる巻きの左手でつかんだ。おい、こら、お前アホみたいに力強いのに!

「ちょ、いたいたい!アホやめれ禿げる!」
「悪い子にはお仕置きや!必殺毒手!」
「べつに悪い子ちゃうし!毒手とかアホちゃうん!恥ずかしいでその設定!」
「なんやとこの!」

くそ、力じゃかなわん!でも本気で痛いってゆったら少しゆるくなったから、さって頭を下げて逃げようとしたら、またがしって掴まれて、それからわしわし撫でられた。

「なんなんもーやめてー」
「なまえちゃん」
「あー?」
「俺のこともらって」
「はあ?」
「俺のハジメテなまえちゃんにあげるわ」
「あ、やっぱ童貞なんや」
「掘り下げるとこそこちゃうやろ」

白石はまた呆れた顔でため息ついた。気づいたらあたしを撫でる手がすんごいやさしくなってて、くしゃくしゃになったあたしの髪を指で梳かしてる。
なにこの状況、恥ずかし。

「なまえちゃん顔真っ赤やで」
「うっさいどーてー」
「ほぉ、んなら今すぐその身体で卒業させてもらおか」

白石は意地悪く笑った。あかん、エロい。本気で迫られたら断れない気がする。

「っ、順番は守って!」

ちょっとテンパったあたしがそう言ったら、白石は一瞬驚いたみたいな顔したあとめっちゃ笑ってた。くっそ。

(20120621)
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