hotch・potch

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朝、談話室に降りるとソファからこちらをじっと見つめるシリウスと目があう。なぜか毎日そうなんだよね、へんなの。後ろでリリーがため息をついてるのは、彼というより、その隣で無駄に大きく手を振っているジェームズのせいだと思う。

おはよう、と声を掛け合って改めて向き合う。シリウスの耳がほんのり赤いのが、ちょっとだけ幸せ。いたずら仕掛け人として悪名を轟かせている彼だけど、私とつきあい初めてからは落ち着いてきたって言われてる。大したことはしてないと思うんだけど、そう言われるとほめられたみたいな気がして、またちょっと幸せ。

シリウスと付き合い始めて半年。そんな風に、のんびり毎日を過ごしていけたらいい。
……とついさっきまでは思っていたのですが。


「やっぱり別れようかな」
「!?!?」


ただいま、シリウスの告白をうけたことを絶賛後悔中です。

ここは外廊下の傍の原っぱ。最終授業が終わってすぐとあって、人も多くにぎやかだ。生徒達は丸く輪になって、けらけら笑いながらいたずら仕掛け人達を取り囲んでいる。これだけなら、まだいつもの光景だと笑って見ていられたのだが。

人垣の真ん中で笑いぐさにされているのが自分の友達で、杖を向けパンツをおろしてやろうなんてガキっぽいことをしてるのが自分の彼氏だなんて、笑えない。

シリウスがセブルスを嫌ってることは知ってたよ?でも言ったよね。セブルスは私にとって友達でもあるんだって。ホグワーツ入学前からの仲だから、シリウスにどうこう言われる筋合いないし。
お互いに仲良くなれないなら相手をしなきゃいいって。さんざんお願いしたよね?その結果が、これですか。

彼氏が主犯の虐め現場発見。これって、100年の恋も冷めて当然じゃない?


「まっ、待ってくれ!!あの、これはあいつが俺達に呪をかけてきたのが始まりで」
「だから?」
「だからその、俺達が悪いんじゃないというか、」
「それで?」
「…………え、っと」


シリウスは真っ青な顔で立ち尽くしている。魔法への意識もおろそかになり、セブルスの体がぐらりと傾いた。あわてて浮遊呪文をかけ、ゆっくりと地面へ下ろす。
皆に笑われて恥ずかしかったのだろう、セブルスは真っ赤な顔で私を睨みつけた。


「っ、助けてくれなんて」
「言ってないね。でも」
振り返り、にっこりとほほ笑みかける。何故かセブルスの口元が引きつった。
「貴方を守る云々は置いといて、今、私は怒ってるの。半年前の自分を後悔してる位にはね!とりあえずセブルスは下がっていて」
「っ、ああ」


自分でもびっくりする位、異様に低い声がでた。シリウスはもとより、後ろでひそひそ話し合うジェームズ達もうっとうしい。さっきまで笑っていた人たちも静まり返っていた。輪の中ではっきり宣言してやろう。もうお別れだって。そう、息を吸い込んだときだった。シリウスが立ち上がり、杖を投げ捨てる。皆が注目する中、突如シリウスは頭を下げた。


「ス、スネイプ!その……、お、俺が悪かった!!」


皆が驚いたのも無理はない。謝られた本人が一番びっくりしていた。半ば呆然とするセブルスにつめより、手をつかみあげるとにっこりと笑みを浮かべ――たかったのだろうが、口橋が見事にひきつっていた。
ジェームズがあわててシリウスの肩を掴む。


「ちょっ、シリウス!落ち着けよ、冷静になって自分の行動を振り返るんだ」
「俺は冷静だ!今から何をすべきかも解ってる!」
そういって、セブルスを真剣な顔で見つめ両手で青白い手を握り締めると
「俺たちっ、今日から親友になろうぜ!!」
大声で叫んだ。


ひゅうう、と乾いた風が男3人の間に吹き抜ける。私も、ただただ驚きに目を見開くことしか出来ず。一拍の間の後、ジェームズとセブルスが同時に叫んだ。


「「どこが冷静だ!!」」
「唯と別れる位だったら、こいつと親友になった方がマシだ!!」
「君って……」
「お前という奴は……」


お互い拍子抜けした顔で返し、頭痛を堪えるように各々頭に手をやっている。シリウスは素早くセブルスから手を離し、私を窺うように顔を上げた。目が、これで許してくれるだろ?とキラキラ輝きながら訴えかけてくる。
勿論、答えはノー。いきなり親友って何、とかなった方がマシとか端々気になるところがあるので、却下です。

首を横に振って笑みを浮かべ、3人に背を向ける。とたんにざわめきが大きくなったのでちらりと振り返れば案の定シリウスが地面に膝をつき何故かセブルスに縋りついていた。ぼろぼろと涙を流しながら、だ。膝にまとわりつかれたセブルスの顔色が、さっきより格段に悪くなっているように見えるのは気の所為か。


「っ、ま、待ってくれ唯……今すぐ、こいつとしっ、親しい仲になるから……っ」
「っ!?遠慮するっ!!離せ、ブラック!!」
「そんなこと言うなよセブルスっ!」
「名前で呼ぶな!!寒気がする……っておい、お前!僕のズボンに鼻水をつけるのを止めろ!ポッター、この男をどうにかしろ!」
「あー、そうなっちゃうと、僕にもどうにもならないんだよねぇ。唯じゃないと」


私は勿論、セブルスの助けを求める声に聞こえない振りをしてその場を立ち去った。だから、その後に何があったのかは知らない。

シリウス(というよりは私?)を宥めるためのてんやわんやな騒ぎに奔走した結果シリウス達とセブルスが友人ともライバルとも呼べない奇妙な間柄になったり、彼らの争いがなぜかマグルゲームになったり、彼らが偶然廊下で出くわした時先ず最初にする行動が“杖を掲げる”から“周囲の人影を確認する”になったりとおかしな変化があったが、そのときの私には知る由もなかった。

――私達がどうなったか?それはまぁ、ご想像にお任せするとして。


どういうわけかおかしなことに

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