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お向かいのテルプシコレ(赤葦)





久しぶりに他校に通う彼氏である京治と一緒に帰れるのが嬉しい。しかし二人で並ぶと制服の色が違うのでなかなかに目立つ。うちの高校は紺、梟谷はグレーだ。それにうちは女子はブレザーだけど、男子の制服は学ランだから、ブレザーの男子と歩いていると結構目につきやすい。
「何?そんなにじっと見て」
「京治はブレザーの制服似合うなぁって」
「そう?」
「うん。かっこいいよ!」
うちでは学ランしか見ないから尚更だ。そもそも彼はかっこいいんだけど。そしてふと学ランとの違いとしてネクタイが目に入った。
「京治、ネクタイ貸して!」
「付けたいの?」
「うん!」
普段はリボンを付けているのでネクタイを付ける機会などほとんどないと思ったのだ。唐突な思いつきにも関わらず京治はすんなり承諾してくれた。
しゅるりと京治がネクタイを外す。どこか色っぽい仕草にちょっぴりドキッとした。
「はい」
「わぁい、ありがと!」
京治から借りたネクタイを襟元に掛け、早速締めようとする。ところがどうにも上手くいかない。
「ん…?いや、違うな…んん?」
「こうだよ」
手が伸びてきたと思ったら、後ろから抱え込むようにして京治が私の襟元にあるネクタイを締め始める。
「正面から手伝うとかじゃないんだ…?」
「普段の自分と同じ向きの方がやりやすいから」
しれっとした表情で京治は話すけれど、私はこの近距離に気が気ではない。出来たよ、と言われて見てみるとネクタイが綺麗に締められていた。
「ありがとー、何かコツとかあったり……」
振り返って聞いてみるも、返ってきたのは唇への柔らかな感触だった。ちゅ、という音をたててお互いの唇が離れる。
「ごめん、つい」
「私はキスの理由じゃなくてネクタイ綺麗に締めるコツを聞いたんですけど」
謝罪を口にしつつも悪びれる様子のない京治は、彼のネクタイをしている私をじっと見る。何だか俺のって感じがしていいね、などと微笑みながら言われてしまい、さらに顔の熱は上がるばかりだった。