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嘘をつけないアタランテ(侑)





スマホから通知音が鳴る。おそらくテスト期間だから遊びに行かない?という他校の友人からの誘いだろう。スマホを操作してメッセージを見てみると、概ね内容としては合っていたものの予想とはその方向性は少し外れていた。
「ね、聞いてよ侑」
「なんやねん。俺今日誌書いてんねんけど」
今日の日直は侑と私。他の仕事は全部やるという約束で日誌は侑に全て任せた。侑の反論を聞かずにいたから、半ば押し付けたに近いかもしれない。
「そんで?なんやねん」
「よくぞ聞いてくれた」
「お前が聞けって言うたんやん」
「合コンに誘われちゃった」
ぱちくりとした顔の侑。珍しい表情だな、と思った。しかしすぐに元の表情に戻す。
「……何で俺に言うねん」
「嘘でも行くなって言って欲しくて」
気軽に冗談を言い合える仲の侑とは友達と言うには近すぎる距離にいる。所謂友達以上恋人未満ってやつだ。こうやってアプローチしているけれど、侑の気持ちはわからない。私のことどう思ってるのかな。何もしないではいられない私はたまにこうやって仕掛けるのだ。
「いや言わへんし」
「だよねぇ」
……今のところ連戦連敗だけど。侑がカリカリとペンを走らせ始めるのを見届けて、スマホに目を落とす。まあ目の前に好きな人がいて合コンには行くわけないんだよね。スマホを開いて断りのメッセージを入れようとすると、チラリとこちらをみた侑と目が合った。
「……………行くん?」
「……行ってもいい?」
可愛い言い方にちょっぴりきゅんときてしまった。目を合わそうとするとふいと逸らされてしまう。
「……………別にええけど」
「あれ、いいの」
「……俺に勝ったらええよ」
すっかり日誌は書き終えたらしい侑は、カバンに筆箱を片付け始めた。
「腕相撲で俺に勝ったらな!」
「行かせる気なくない?」
これは侑なりの『行くな』ってことだと捉えていいよね。行く気なんかないっていつ伝えてやろうかな。侑の返答に満足した私は、日誌を出したらファミレスにでも誘おうと決めた。もう少し彼と一緒に居たいと思ったのだ。