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ポルックスの思いの丈(治)





窓の外を眺めながら空を見ていると、後ろから何しとるんと声をかけられた。振り向くとそこには治がいた。治とは同じクラスになってからよく喋る仲だ。そんな彼は私の表情に気づく。
「どないしたん。暗い顔やな」
「……わかる…?」
顔に手を当てぐにぐにと動かす。手で無理やり口角を上げてみるが、依然として気分は暗いままだ。
「なんかあったん。今なら治くんが聞いたるで」
「治くん聞いてくれるの」
「おん」
おどけるような言い方に少し元気が出た。
「実はですねー、ずっと好きだった人が友達とくっつきまして…」
「失恋やん」
「直球やめて。傷が開く」
さっきまでの優しく聞いてあげようみたいな雰囲気はどこにいった。ド直球で失恋の傷を抉ってくるじゃん。
「ってかお前好きなやつおったん」
「おったんですね……」
そりゃあ誰も知らないだろう。誰にも言ってない、というか言えなかったのだ。私が好きになるころには友人が片想いしていたから。
「友達の方が好きになるの早かったから誰にも言わなかったの……」
「早い話が身を引いたんか」
「……彼らの幸せを願ったんです〜…」
両手で顔を覆い、大きくため息を吐く。
「……俺も気持ちはわかるなぁ」
「えっ何、治失恋したの」
あの宮兄弟の片割れを袖にする人がいるのか。そもそも治に好きな子がいるのにも驚きなのだが。
「好きな子に好きなやつがおってん」
「あ〜…、えっと、ほらチョコ食べて元気だして?」
「慰め方下手か」
自分に重ねてちょっぴり辛くなった私は、フォローしようとして机の上に置いておいたチョコレートを差し出した。最近新発売の私のお気に入りである。
「まあでも、その好きな子は失恋したらしいねん」
「えっチャンスじゃん」
「つけ込んでええと思う?」
「いいんじゃない?むしろ今行かなくていつ行くの」
治はほんまにええんやな?とうっすら笑みを浮かべた。さっき手に取った箱からチョコを取り出そうとしていると、その手を取られぎゅっと握られる。
「ほんなら今からつけ込むわ。俺と付き合うてくれん?」
「は…?私?!」
「自分やで」
「何かの間違いではなく?!」
驚いて繋がれていた手を離してしまった。名残惜しそうな顔をするんじゃない。
「まだ前の恋を吹っ切れてないんですが」
「ええよ。そのうちこっち向かせたるし」
そのえらく強気な発言に照れてしまう。失恋に効くのは新しい恋とは言うけれど、まさか自分の身に降りかかるとは。とりあえず落ち着こうと手元のチョコレートを口に入れる。このチョコレートを食べ終わるころには私の失恋に効く特効薬ができてしまっているかもしれない。