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へーべ、食べてしまいたいよ(角名)





「お邪魔します」
どうぞ、と促されて部屋へ入る。彼女の部屋に入るのはこれが初めてだった。
彼女の部屋は、綺麗に整頓された女の子らしい部屋だった。こうやって好きな子の部屋に入るのは多分初めてのことで、多少緊張もしている。ぐるりと暖色を基調とした部屋を見回すと窓際にあるグラスが目に入った。窓際には割れたグラスが置いてあり、その割れた部分は加工されていた。パッと見インテリアの一つに見えたそれに、俺は確かに見覚えがあった。
「あれ、もしかしてこれ俺があげたやつ?」
「そうだよ!大事にしてたんだけど落として割れちゃって。でも捨てられなかったからインテリアにしたの」
覚えてくれていたのが嬉しいという顔から落とした時の残念そうな顔へ話しながらも表情がころころ変わる。付き合いはじめの頃、ゲームセンターで取ってあげたのを覚えている。自分があげたものをこんなに大事にしてくれていたことはもちろん、あの頃と変わらないころころと変わる表情に好きだな、と思った。
グラスの中には小さく折りたたまれた紙が入っている。何だろうと思っていると彼女から説明が入った。
「これはね、"幸せ貯金"です」
「あ、何か聞いた事ある。いい事があったら書いて貯めておくんだよね」
名前を聞いて思い出したが、それはSNSで見たことがあった。
「最早私にとっては日記みたいな感じなんだよね」
「日記ね、俺なら三日坊主でやめちゃいそう」
「ふふ。まあ毎日じゃないから続いてるよ。それに……」
そこから彼女は口ごもる。それに?と続きを促して見ると少し頬を染めてこちらをちらりと見る。
「……それに、倫くんとの思い出が貯まってくと思うとね、すぐに書いちゃう」
わ、忘れて!と言って彼女は両手で顔を隠してしまった。俺はと言えば彼女への愛しさでどうにかなってしまいそうだった。この子は俺をどうしたいの。彼女も俺のことかなり好きだと思うが、早い話が俺も彼女にベタ惚れなのであった。




三題噺・お題:『割れたグラス』『ゲームセンター』『三日坊主』