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フローラとプレリュード(角名)





「いつまでそんな顔してんの」
「納得いかない〜……」
それなりに着飾った格好とは正反対に、私の表情は曇っていた。車の運転中、信号待ちで運転席の倫くんがこちらへ顔を向ける。
「思ってるより俺はモテないから」
「馬鹿!モテるに決まってるでしょ!」
「惚れた欲目じゃない?」
信号が青へと変わったので、倫くんは車を発進させる。アクセルを踏みながら彼は私の言葉に苦笑していた。
私たちが向かっているのは高校時代の友人の結婚式だ。だからそれなりに小綺麗な格好をしているわけなのだけれど。
「倫くんのスーツ姿は反則だと思う。これ以上モテちゃったらどうしよう」
「杞憂でしょ」
普段見慣れない彼のスーツ姿は破壊力がとんでもなかったのだ。正直言って誰にも見せたくないくらいには格好良い。
「……自分は私の服露出少ないの指定してきたくせに」
「そりゃあ大事な彼女ですから」
しれっとそう言って彼はハンドルをきった。そういう所がずるいと思う。


*****


ほら、着いたよと先に降りた彼は助手席側のドアを恭しく開ける。
「はい、お手をどうぞ」
「ありがと」
慣れない少し高めのヒールを考慮してか手まで差し出してくれる。その姿が芝居がかった口調なのにバッチリ決まっていて私は悶えそうになる。
「倫くん格好良い……、好き……」
「それは光栄だね」
「写真撮っていい?」
そう尋ねると残念ながら駄目だと即却下された。そんなこんなで会場にたどり着くまでたわいの無い話をしていると、おもむろに彼は式の話題を口にする。
「あ、そうそう。ブーケトス頑張ってね」
「え?なんで?」
「取れたら渡したい物があるから」
それってもしかしてもしかするのではありませんか。聞いてしまうのは野暮だと思いながらも私はそれが何なのか察しがついてしまう。この嬉しさをどう彼に伝えようか。冒頭の不機嫌さはどこへやら、跳ねるようにして私は彼の腕に抱きついた。