×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

風邪っぴきメルポメネ(角名)





講義が終わって急ぐ足で薬局に寄る。ひとまず熱冷ましのシートと飲み物をカゴに入れた。あとはなんだろう、食欲無さそうだし食べやすそうなゼリーでもあればいいかな。私は手早く選んで会計を済ませた。というのも、倫太郎が珍しく風邪をひいたからだ。


*****


彼のアパートへと着き、ピンポンを鳴らすも返事はない。仕方なく合鍵で入ると倫太郎はベッドに横になっていた。
「お邪魔しまーす……あ、ごめん起こした?」
「さっき起きた。っていうかほんとに来たの」
「どうせ倫太郎ちゃんと食べてないと思って」
「…………」
沈黙は肯定ととりますよ、倫太郎くん。ベッドから上体を起こした彼はどこかぼんやりとしていて頬も赤い。付き合ってからというもの、こんな状態なのはほとんど見たことがなかった。
「熱は下がったの?」
「37.8……」
「微熱だね」
倫太郎のおでこに手を当ててやると気持ちよさそうに目を細めた。
「手冷たくて気持ちいい」
「……!」
すり、と頬ずりする猫のような仕草に悶えそうになる。そのタイミングで足の近くに置いた袋がガサリと音をたて、その存在を思い出した。というか病人の傍に長居しても迷惑かもしれない。彼の病状を悪化させたくはないのだ。
「とりあえずゼリーとか飲み物買ってきたから、起きたらお腹に入れてね」
冷蔵庫に入れておくから、と告げキッチンにて買ってきたものを片付ける。名前を呼ばれたので彼のベッドへと戻ると、おもむろに手を握ってきた。
「……もう帰っちゃうの?」
「!、……いや病人の傍に長居するのも良くないでしょ?」
眉を下げてこちらをじっと見つめてくる。ばか、そんな可愛い顔してこっちを見るんじゃない。帰りづらいことこの上ない。
「帰んないでよ」
「あとちょっとだけね」
「…………泊まってけばいいじゃん」
熱のせいか風邪のせいか定かではないけれど、今日の倫太郎はとことん甘えてくる。少ししては帰らないで欲しいコールに負け、結局私はここで一夜を明かすことになるのである。