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明星ダイアリー(角名)





彼の家に泊まった翌朝のこと。カーテンから射し込む光は暖かだ。まだ眠っている倫太郎を起こさないようにベッドから抜け出し、朝食の準備を済ませる。何度も泊まりに来ているため、すっかり勝手知ったるキッチンにいい匂いが漂う。
「よし、出来た」
味見良し、彩り良し。そろそろ彼を起こしに行こうとベッドのある部屋に再び入る。カーテンを勢い良く開け、ベッドに乗り上げる。
「倫太郎起きて!朝ごはん出来たから!」
「……ん、……おはよ」
むくりと倫太郎が起き上がる。彼はまだまだ眠たそうな顔をしている。こんな顔を見られるのは私だけの特権だ。
「今日はなかなかいい出来なんだよ」
「すごくいい匂いする」
「でしょ?冷める前に食べよ!」
ベッドから降りようとすると、左手を取られた。握られたそれに指を絡められる。執拗に撫でられるのは私の左手の薬指。
「倫太郎……?」
「……幸せだなって思って」
「ふふっ、急に?」
するすると絡められる指から心臓の鼓動が聞こえてしまわないだろうか。そして彼はふっと目を細め、柔らかく微笑む。
「ねぇ、そろそろ俺の苗字貰ってくれない?」
「……えっと、それはつまり。私も角名になるということで」
「うん。良くない?ね、角名さん?」
そう言って彼が心底幸せそうに笑うものだから。その響きにも彼の表情にもきゅんときてしまった。直接結婚しようと言わないプロポーズが何とも彼らしく。というか私、プロポーズされたのか。実感がじわりじわりとわいてくるにつれ、段々顔に熱が集まる。
熱を帯びる頬を抑えている私を後目にリビングへと足を運ぶ倫太郎。しれっとしているのかと思っていたけれど、私は彼の耳がしっかり赤くなっていたのを見逃さなかった。そんな彼の大きな背中に後ろから抱きついてみる。
「うわっ、びっくりした」
「えへへ。ね、今日本屋行かない?」
「いいけど」
何か買いたいものあるの?と尋ねられ、私は某結婚情報誌のタイトルを声高に返すのだった。