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微笑んでビクトリア(角名)





目の前で一生懸命に日誌を書いているクラスメイトを見つめる。別にこんな学級日誌なんか手を抜いていいと思うんだけど。でも、何事にも手を抜かない彼女のそんな姿勢が俺は好きだった。
「角名くん部活行かなくていいの?」
「今日遅れてくって言ってあるから平気」
「私あとやっておくよ?」
きっと彼女にしてみれば普段通りその方がいいと思って行動しているのだろう。けれど彼女と少しでも長く一緒に居たくてうだうだと日直の仕事をこなしている俺としては面白くない。
「いや俺もやるから」
「ほんと?ありがとー!」
黒板上まで届かないから助かる、と満面の笑みを零す彼女に心臓がぎゅんと高鳴る。いつもいつもこの笑顔に踊らされている自信がある。彼女に自覚はないけれど、掌の上で転がされているのはいつだって俺の方だ。
普段からアピールしてるつもりなんだけどな。どうにも彼女は鈍いらしい。何となく悔しくなって、黒板を消しに椅子から立ち上がった。
上の方から黒板を消していると、日誌を書き終わったのか隣へ彼女がやってくる。
「下半分はやるね」
「わかった」
結局分担して黒板を消した。それにしても彼女は小さいなぁ。覆いかぶさったら見えなくなりそうだ。
「角名くん背ぇ高いよねぇ」
「バレー部だとそうでも無いけどね」
「ほら、手も私よりずっと大きいでしょ」
ね?と掌をこちらに出してくるから、掌同士を合わせてやる。関節1個分くらい違うよ!とはしゃぐ彼女は愛らしい。
そこにほんの少しの悪戯心がわく。彼女の手をこれ幸いにときゅっと握ってやる。少しは意識してよ、という思いからの行動だった。
「す、角名くん……?」
どうせ意に介した様子などないだろうなんて思った自分に朗報だ。彼女を見ると、顔を真っ赤にさせて視線を泳がせている。
ちょっとは俺の気持ちを思い知ってくれただろうか。そろそろ気づいてよ、ねぇ。