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ヘスペリアにおねだり(治)





「なあなあ一口ちょうだい」
幼なじみである双子の片割れ、治は私が何かしら食べていると決まってこう言ってくる。というか多分彼は世渡り上手の質であると思われるから、誰にでもこうして一口貰っていると私は予想している。
「やだよ、さっき開けたばっかりなのに」
「いけずや……」
「しょうがないなぁ」
目に見えてしょぼんとする治に良心が痛み、結局あげてしまう。治の一口は私の一口と比べ物にならないし、それより何より好きな人と間接キスになるからいつも躊躇するのだ。
彼からはただの幼なじみとしてしか思われてないのだろうな。高校生になった今でも度々こうして一口をせがんでくるのだから。
「はい、どうぞ」
「ありがとぉ」
それでもこの幸せそうに頬張る顔を見るとこちらまで嬉しくなってしまうから、ついつい甘やかしてしまうのが常であった。


侑も治も、二人してお弁当を忘れていったみたいで宮家の母から預かってきた。届けるついでに一緒にその場でお昼を食べることになった。治は飲み物を買いに行っている。
双子がお弁当なのに対して、私は今日は購買のパンをお昼にした。何か変わった味の物があったから好奇心ままに買ってみたのだ。明太マヨカレー味とは如何に。
「それ何パンなん」
「なんかね、新商品らしいよ。明太マヨカレー味だって」
そう侑に返したけどあんまり興味はなさそうだ。
「一口いる?」
「いや要らん。治じゃあるまいし」
「治はすぐ言ってくるもんね」
「お前にだけな。あと俺がお前から一口もろたら多分あいつキレよるで」
治が怒る?とは一体。疑問でいっぱいの私を後目に侑はお弁当を食べ始めた。
「さては侑、私のことからかってるんでしょ」
「ちゃうわ。傍から見とって焦れったいねんお前ら」
「侑と二人で何話しとるん」
「ひゃっ!!お、治…………」
話題の人物が背後から現れて私はびっくりしてしまう。ちょうどええわ、と侑は小さく零したが真意が掴めない。侑は私の食べかけのパンを指さして口を開く。
「やっぱそれ一口くれ」
「へ……?あ、うん、いいけど」
「あかん」
それを止めたのは治だった。ほらな、と侑からは聞こえてくる。
「一口もろてええのは俺だけにしといて」
「えっ?あ、ちょっと侑!?」
侑は事後報告でええから後は好きにせぇ、なんて言って席を立った。
「誰にでもそうやって一口やるん?」
「……治くらいだよ。そうやって言ってくるの」
「ふぅん……他のやつにやったらあかんからな」
もしかしてもしかして。それって期待してしまってもいいのかな、理由を聞いてもいいのかな、と私の気持ちははやるばかりであった。