×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

青息吐息アンティオーペ(侑)





かれこれ数十分ほどの押し問答、私は玄関から先に進めずにいる。原因は足元にまとわりついている侑である。
「い〜や〜や〜!!!」
「私だって好きで行くわけじゃないの!」
「何で今日に限って休日出勤なん!?」
そんなの私だって知りたい。何なら行きたくない。たまたまオフの日だった侑は、起きてくるなり出掛ける格好をした私を見て駄々をこねはじめたのだ。
「せっかく俺オフやのに……」
「納期間に合わないんだもん」
「誰やねんそんなん決めた奴」
「相手企業」
「よっしゃ、殴り込みや」
「待って待って」
冗談とはわかっているけど、どことなく侑ならやりかねなさそうですぐさま止めに入る。
「ほら、もう出ないと電車間に合わないから」
そもそも駄々をこねられていた時点で何本か電車を見送っているのだ。普段の勤務のように始業時間が決まっていなくて良かった。
「………行くん?」
「うっ」
侑は絶対に私が彼のこの顔に弱いことをわかっている。眉を下げて若干の上目遣い、侑じゃなきゃ許されないでしょこれ。その可愛い顔を目に焼き付けながら、脳内で納期について考える。今日行かなかったとしても少し残業すれば何とかなるか。
「……わかった。今日はお休み」
「ほんま?」
「ほんとほんと」
鞄を片付け、コートも掛ける。せっかくしたけどメイクも早く落としちゃおうかな。
「ほんなら一緒に二度寝しようや」
「メイク落として着替えたらね」
部屋着持って来たるな、と侑は上機嫌で寝室へ向かう。その間にメイクを落とすため私は洗面所へ。
昔からそうだけど、私はどこまで行っても侑に勝てないのである。