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ポモナよ照らして(治)





年明けに大会もあるので、年末まで練習がみっちり入っている幼なじみはたまの休みくらいゆっくりしたいとなかなか首を縦に振らなかった。しかしそこは長年の付き合い。出店もあるみたいだし奢ってあげるから、と半ば無理やり初詣の約束を取り付けることに成功したのだ。
待ち合わせは神社の前。この日のために新調した服はどう思われるだろうか。普段より大人びた格好にしてみたのだけれど。少しくらいは気づいてくれたら、なんて乙女心はきっと治にはわからないだろう。既に神社は混雑し始めており、やっぱり待ち合わせは別の場所にすれば良かったかななんて思う。私は治の背が高いから見つけるのも容易いが、治にとっては小柄な私を見つけるのはなかなか難しいかもしれない。しかしそれも杞憂だったようでちゃんと時間通りに彼はやって来た。
「えらい人やな」
「ね。ちょっとしたお祭りみたいでしょ」
「出店もぎょうさんあってええな」
真っ先に出店に目が奪われるのはいかにも彼らしい。それを餌に釣ったのだからそう言えばそうではあるのだが。しかしせっかく神社に来たのだからお参りもしなくては。列に並び自分達のお参りの順番が来るのを待ったが、思ったほど時間はかからなかった。鈴を鳴らして二礼二拍手一礼。願いごとを心の中で真摯に神様に伝える。家から少し離れたこの神社にしたのは、実はここに縁結びの神様が祀られていると聞いたからいう理由もあった。列から抜けると治はいつになく真剣に願掛けをしていた私を珍しいと思ったのか願いごとは何なのかと聞いてきた。
「何お願いしたん?」
「言ったら叶わなくなるらしいから言わないよ」
「ケチやなぁ」
そのケチにこれから奢ってもらうのはどこの誰だ。願ったのは彼との急接近。今年こそはこの幼なじみの関係を脱却したい…夢のまた夢だろうけど。屋台飯で釣るような真似しか出来てない段階だからまだまだこれから先は長そうだ。
「今日は一日中炬燵でぬくぬくしてよう思てたけど、たまにはこういうのもええなぁ」
ぼんやりと遠くまで続く出店の並んだ様を見ながら彼は言う。
「あと今日の格好可愛ええな。似合とるで」
「!」
誘てくれてありがとうな、はよ行こ、と言われてしまえば私はもう嬉しくて。さっそく願掛けの効果があったのだろうか。お賽銭もっと入れても良かったなぁ、と現金なことを思った。



三題噺・お題:『大人』『お祭り』『ぬくぬく』