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エウリノーメと追いかけっこ(角名)





油断していたと激しく後悔している。今私は全力で角名から逃げている。というのも私は彼に想いを寄せており、ずっと隠してきたのだ。それがついさっき露呈してしまい、思わず逃げてしまっているのである。
「はぁ…はぁ…。撒けたかな……」
教室から猛ダッシュで逃げて、体育館前の渡り廊下まで来た。背後を確認するが角名の気配はない。
息を整えて冷静になるとふと我に返った。よくよく考えてみれば角名とは同じクラスなのだから、明日も顔をあわせるのだ。今逃げても意味は無いのではないか。
「いやでもこれタイムアウト的なやつだから……」
「何がタイムアウトなの」
「そりゃ……えっ、角名!?」
「さっきのちゃんと説明してもらうから……ってこら!?」
自問自答しているうちにいつしか見つかってしまっていた。条件反射で私の足は駆け出してしまった。ひとまず体育館に逃げ込もうとしているが、運動部の男子にかなうはずない。
「ちょっと…!待てって!」
体育館に入ってすぐに捕まってしまった。右手を取られて引かれると、そのまま後ろから尻もちをつきそうになる。
「うわ、わわっ!」
「おっと」
角名は私を上手に受け止め体育館の床に座り込んだ体勢になった。それどころかぎゅっと抱きしめられている。脈がはやいが、これは走っていたからという理由だけじゃあるまい。
「はぁ〜……、逃げんなって……」
「うっ、ご、ごめん」
「何で逃げんの……」
「だって……フラれるの怖くて……」
結局のところ、私が臆病なだけなのだ。今の今までずっと気持ちを隠していたのもそういうことなのだから。後ろから角名のため息が聞こえる。呆れられちゃっただろうか。
「……俺も好きだって可能性は考えなかったの」
「そんな自信あるわけないもん」
「変な方向に自信満々じゃん」
ぷっと吹き出す声が聞こえる。相変わらず表情は見えないけれど。
「……好きだよ。観念して俺に捕まっといてよ」
ね?と言われてぎゅうぎゅう抱きしめる力は強くなる。これは果たして現実なのだろうか。私と角名の全力での追いかけっこはこうして幕を閉じたのだった。