×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






治の彼女であるなまえは料理が上手い。特にお菓子が絶品で、最近は凝ったこともするようになった。なまえが料理が上手いというのはわりと周りにも知れ渡っている。治が食べることが何より好きなこともあり、たまにそのことでからかいを受けることもある。
「治、お前吾妻の腕前目当てで付き合うとるんちゃうん?」
「そんなわけあらへんて」
その場ではさらっと流すことが大半である。よっぽど酷いからかいでない限りは流すことに決めている。わざわざ反論するほどそこまで子どもではない。自身の片割れならいちいち突っかかっていること請け合いだろうが。


◇◇◇◇◇


今日の部活はミーティングだけなのでいつもより早く帰れる。だから彼女と一緒の時間を過ごしたいと思いどこかに遊びに行こうと治は誘った。しかし彼女の返事は否であった。今日はお菓子作りに専念するそうだ。代わりにではないが、なまえの家にミーティングが終わったら来ないかと提案された。もちろん行くと返事はしたが、提案する際の照れながら言う彼女があまりに可愛らしく、彼女ごと食ってやろうかと思ったことは飲み込んだ。


◇◇◇◇◇


ミーティング後、治はスキップしそうなほど浮かれながら彼女の家へ向かう。アランには、着替中にミーティング終わってから活気を出すなやと言われた。彼女に勝るものはないのである。


◇◇◇◇◇


「お疲れさま!」
なまえは治が家に着くとすぐに扉を開けて招き入れた。彼女の家にお邪魔すると、あたり一面にふんわり甘い匂いが香っていた。今日はクッキーを焼いていたのだという。
「ちょうど焼きあがったとこだよ」
「出来たてほど贅沢なもんはあらへんよなぁ」
「だよねぇ」
治が席につくとすでに淹れたての紅茶まで用意されていた。完璧なもてなしである。治が焼きたてのクッキーを一口かじると、口の中にオレンジの風味が広がった。これ前に俺が褒めた味や、と治は思った。わざわざ自分のために準備したのかと思うと笑みがこぼれる。
「俺なぁ、お菓子の中ではなまえの作ったお菓子が一番好きやなぁ」
「ほんと?嬉しい」
「…でもな、一番好きなのはなまえやで」
「!、………嬉しい」
途端に彼女の頬はもみじの如く真っ赤に染まる。未だにこう言った言葉に慣れないいつまでたっても初心なところも彼女の好きな所の1つだった。
からかってくる奴らには言わせておけばいい。こんな可愛い彼女を知っているのは自分だけでいいのだから。
紅茶が冷めないうちに食べようと思い、クッキーをもう一つ、と手を伸ばした。






三題噺でお題は『もみじ』『オレンジ』『クッキー』でした
『もみじ』の入れ方があまりに強引でボツ




botu01(治)