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▼ 05 リゲルまでまっすぐ





朝練前から体育館が少し騒がしかった。一体なんなんだろう。何かあったのだろうか。不思議に思いながら体育館へ入るとその答えがわかった。先輩方に囲まれていたみょうじがこちらへ気づき振り返る。
「おはよう!赤葦!」
「おはよ、う」
振り返ったみょうじは眼鏡をかけていた。


▽▲▽▲▽


「待って待って!赤葦一緒に教室まで行こ!」
着替えを済ませたみょうじがパタパタとこちらへ駆けてきた。その眼鏡姿は本当に見慣れない。
「みょうじ、今日は眼鏡なんだ?」
「朝なんか目の調子悪くてコンタクト入らなくて。距離感とか掴みにくくてすごく不便。」
「どれくらい視力悪いの?」
「この距離で赤葦の顔ちょっとぼやけるよ」
ふぅん、と言いまじまじとみょうじの眼鏡姿を眺める。そんなジロジロ見ないで!とすぐ言われてしまったが。
「感覚ズレてるなら今日1日気をつけてね。みょうじどこかでコケそうだから」
「失礼な!大丈夫だよ!だーいじょうぶ!」


▽▲▽▲▽


あれだけ大丈夫だと豪語していたみょうじを放課後見れば膝に絆創膏が貼ってあった。
「みょうじ………」
「言わないで…私も自分が信用ならないから…」
「部活危なくない?」
「朝練の時は平気だったけど、うん、心配になってきた……」
みょうじは乾いた笑いをこぼす。心配だけどみょうじには部活を休む気はないし、かといってずっと見ててやるわけにもいかないし。怪我をしないよう祈るばかりである。


▽▲▽▲▽


「みょうじちゃん!!!避けろ!!!」
「へっ…うわっ!」
運悪く流れ玉がみょうじへ飛んでいってしまった。先輩がとっさに叫んだがみょうじの方からはガシャンと嫌な音がした。
「天音ちゃん!大丈夫?!」
「音やばかったけど平気かー?」
「あはは〜…私はちょっと膝打っただけなんですけど……」
一旦練習を中断し、みょうじのもとへ駆け寄るとそこにはレンズの割れた眼鏡があった。
「眼鏡のレンズ割れてる」
「あ〜…見えないけどわかる。音すごかったもん…」
眼鏡なしでは部活どころではないみょうじは渋々だが今日の練習は見学ということになった。個人的にはもうこれ以上怪我をしないで欲しいのでその方が助かるよなと思った。


▽▲▽▲▽


部活終了後、着替え終わって部室の外に出るとみょうじが待っていた。
「赤葦!折り入ってお願いが!」
「みょうじ、それ残念ながら永瀬だよ」
「うぇっ?!ごめん永瀬!!」
「ちょっと面白かったから良し」
話しかけてきたと思ったら俺と永瀬の区別がついていない。今の光景はちょっと面白かった。
「改めて赤葦!申し訳ないんだけど私を家まで導いて欲しい……」
「最初からそのつもりだったよ。心配で見てられない」
「恩に着ます……」


▽▲▽▲▽


いざ帰ろうとしたらみょうじは袖を控えめに掴んできた。何それ可愛い。しかし不安定なのだろうふらつきを見せた。つまづくのも時間の問題な気がする。
「またこけるよみょうじ」
みょうじの手首を掴もうとしたがあまりに細くて驚いた。もともとみょうじは小柄だがこんなに細いのかと思った。
「うわ、みょうじ手首細くない?」
「そう?こんなもんじゃないかなぁ」
「ご飯ちゃんと食べてる?」
「赤葦は私の母ですか」
「ポッキリ折れちゃいそう」
「折れない!」
折れそうで不安だったから思い切ってみょうじの手を握った。良かった、嫌がられてはいないみたいだ。
「赤葦手ぇ大っきいね」
「みょうじが小さいだけじゃない?」
「そうかなぁ。なんか赤葦の手安心する」
そう言ってみょうじはにこにこと笑う。君は俺のことをどう思ってくれているのだろう。安心するって言ってるあたりマイナスではなさそうだけどどうなんだろう。握った手から自身の早い心音が伝わってしまいそうだ。早い鼓動を誤魔化すように、でも好きだという気持ちがいっそ伝わってしまえばいいとばかりに手をぐっと握った。







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