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▼ 03 メイサの色に染まって





※雀田ちゃん視点



我が梟谷学園バレー部は強豪校たるが所以の厳しい練習が有名であり、毎年多くの脱落者が出る。しかしそれでも後輩マネージャーは1人残ってくれたのだ。私、雀田かおりともう1人の3年マネージャーである白福雪絵は大層喜んだ。そしてそんなたった1人の後輩マネージャーが可愛くないわけがないのであった。


▽▲▽▲▽


今日はバレー部3年生で試験勉強と称してファーストフード店で集まっている。各々勉強はそれなりにしているので、要は木兎の尻たたきの方がメインだ。
「もう無理……」
「ほら木兎、頑張んなさいよ。何のために皆で集まってると思ってんの」
「やだ…バレーしたい……」
「休憩入れるかー?」
木兎は早々にペンを置き出した。木葉、甘やかすな。
「この場に赤葦がいればもう少し上手くやる気にさせてくれるんだろうけどね〜」
「それはそうだけど頼りすぎでしょ」
雪絵と猿杙が後輩の名を出す。赤葦はあの木兎の際限のない練習に付き合い、かつ木兎の扱いが上手い頼れる後輩なのである。何より木兎がとても気に入っている。猿杙の"頼りすぎ"の言葉が耳に痛い。
「今日は断られちゃったんだよね」
「そうなのか」
「『テスト勉強あるんですみません』って」
「そりゃそうだ」
そう、すでに断られ済みなのである。
「私もね〜、なまえちゃん誘ったの」
「えっ来るの」
「木葉うるさい。テスト勉強あるからって断られちゃった〜」
「白福、俺へのあたり強くない?」
可愛い後輩マネージャーにもフられてしまった。気を取り直して我らがエースの面倒を見ようと気持ちを切り替えようとする。すると俄に木兎が騒ぎ出した。
「……おっ、あれ赤葦じゃね?」
「えっどこどこ」
「あれ」
木兎が指さした方には長身の黒髪。身長が高いと見つけやすくていいな。確かにあれは私たちの後輩だった。商品を持ち、席へ戻る所のようだ。
「おーい!赤葦〜!」
木兎が呼ぶと、彼はこちらに気づいたようだ。そのままこちらに向かって来る。
「木兎さん公共の場ではもう少し静かにしてください。先輩方お疲れ様です」
さすがの一言に尽きる。木兎を諫め、こちらへの配慮を忘れない。なんとも出来た後輩である。
「赤葦どうせならこっち来いよ!」
「申し訳ないけど居てくれると助かる…」
「何か奢ったげるし!」
情けない話ではあるが割と我々限界である。やっぱり後輩を当てにしてしまう。
「別に構いませんが…。ちょっと連絡だけ」
「あっ連れがいんのか。」
「居ますけどまぁ大丈夫ですよ、木葉さん」
トレーを赤葦は机に置いてスマホを開いた。トレーの上を見ると確かに2人分といった商品が乗っているのがわかった。連れの子に悪いことしたかもな、なんて思っていたら赤葦の後ろから声がかかった。
「ごめん赤葦〜!お待たせしまし…あれ?先輩?」
「あ、良かったみょうじ。今連絡しようとしてたとこだった」
赤葦の後ろから来たのは我らが可愛い可愛い後輩マネージャー、みょうじなまえだった。赤葦がなまえちゃんに事情を説明している。……ん?赤葦の連れがなまえちゃんということは、この2人一緒に勉強しているのか。2人が木兎の前の席に座りながら話す。
「頼んでくれた分の代金払うね」
「別にいいよこれぐらい」
「駄目です〜。じゃあ次は私が払うからね!」
このやり取りから見てよく一緒に来ているようだと推測される。
「2人はよく一緒に勉強してんの?」
その横から木葉が尋ねる。よくぞ聞いた!おそらく3年全員気になっている。
「…わりとよく?」
「基本的にテスト期間はほぼだよね。お互いの都合が合う限り」
マジか。これでこいつら付き合ってないのか。この場にいた誰もがそう思っただろう。
「お互い個人プレーって感じなので楽なんですよね。わからない所はすぐに教え合えますし」
「私が理系科目苦手で…。文系科目は得意なんですけど」
「とか言いながらみょうじ結構順位は良いんですよ」
本当に仲良いな。そうこう言ってる間に2人ともちゃんと勉強道具を机に出している。偉いな。おまけに木兎の勉強の進み具合も見る気のようだ。大変助かる。この出来た後輩達にシェイクでも奢ってやろうかなと思った。







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