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よく晴れた秋の空、清々しい気分で体育祭日和だなぁなんて思っていた。今はやらかしたという気分でしかないが。さっき参加した種目で足を挫いてしまった。高校生活最後の体育祭だし、と張り切ったのが裏目に出たのか。団の得点に貢献は出来たので良いがリタイアである。
ひょこひょこと足を庇いながら救護テントに向かっていると後ろから声がかかった。
「みょうじどうしたん。怪我か?」
「さっき挫いちゃった」
声をかけてきたのはクラスメイトの有川だった。自身も参加した競技を終えたところのようだ。
「大丈夫なん」
「うん。まあ平気平気」
「救護テント向かうんか?」
「早いとこ手当てしてもらおうと思って」
有川とはここで別れて救護テントへ行こうとしたら、肩貸したるでと引き止められた。正直なところ1人じゃ歩きにくかったしお願いしようかな。
「じゃあお言葉に甘え…「なまえちゃん?」
有川の肩を借りようとしたら名前を呼ばれたので振り向く。そこには部活の後輩の治がいた。
「なまえちゃん怪我したん?」
「うん、ちょっと挫いた」
普段わりとおっとりした印象の彼は、珍しく驚いた顔をしていた。
「ほな急いで手当てせな。連れてったる」
「あ、お願いしようかな。有川もありがとね」
治の腕を掴ませてもらい、救護テントに向かうことにした。どちらかと言えば部活の後輩の方が気安い。有川にもお礼を言い、手当てを急いだ。

◇◇◇◇◇


足の手当てが終わった私は、クラスの方のテントの隅で応援するみんなの邪魔にならないよう観戦していた。次は借り物競争か。稲荷崎高校の借り物競争はちょっと有名だ。良くも悪くも有名という意味だが。お題にはいわゆる"ハズレ"が混ざっており、だいたいが恋愛事に関するものだ。『彼氏・彼女にしたい人』とか『好みのタイプの先輩』とか。どうも伝統らしく、毎年新聞部が良いネタと言わんばかりに張り切っている。去年もカップルが生まれたとかなんとか。
集合の様子を見ていると治が参加するみたいだ。その銀髪の近くには瓜二つの金髪もいる。侑も参加するのか。スタートラインへ移動する際に治と目があった気がしたが、気のせいだと思うことにした。今年は宮兄弟が参加するということでそれはもう女子達が色めきだっている。にわかに髪を整え始め、用意していた子達は団扇を出し始めた。準備良いな?
スタートラインに立っても双子は何か言い合いしているようだ。部活以外の場でも変わらないな双子は。そうこうしているうちにピストルが鳴り、選手は一斉に走り出した。紙を拾い、中を見た治はこちらのテントへ向かって来た。借り物は何だったんだろうと思っていると大きな声で呼ばれた。
「なまえちゃん!」
名前を呼ばれて私に注目が集まる。えっ、私?呼ばれたからには行かざるを得ない。とりあえずその場で立ち上がるが走れるだろうか。
「治、私怪我で走れないかもしれない」
「そういえばそうやったな。なまえちゃん、ちょっとごめんな」
「へ…?って、わっ!」
そういうと治は私をひょいと抱え上げ、ゴールへと走り出した。あちこちから女子の悲鳴が上がる。しかしそれすら耳に入らないほど私の心臓もうるさかった。
ゴールに着くと治はゆっくりと下ろしてくれた。審判にお題の紙を見せ、合格の判定を貰った治はこちらへピースサインを送る。
「ところでお題は何だったの?」
「……気になる?」
ほい、と紙を手渡される。何だろ、部活のマネージャーとか?中を見て私は今度こそ心臓が止まるかと思った。


『    』


これは完全にいわゆるハズレのお題じゃん。じわじわと恥ずかしくなってきた私に治はにっこりと笑いかける。
「俺以外に借りられへんといてな?」
もう駄目だ。トキメキで目が眩む。この追い討ちに降参以外私に打つ手は無さそうだった。






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