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祖父母孝行をたまにはと思い、この夏は親戚の集まりに顔を出した。私が夏に祖父母宅に行くのは久しぶりだったので、祖父母達にはにはえらく喜ばれた。
祖父母宅に行くと思い出すのは倫太郎のことだ。倫太郎は私の4つ下の又従兄弟にあたる。その倫太郎が久しぶりにこちらに帰ってくるというのだ。小さいころは夏休みに祖父母の家でほとんど一緒に遊んでいた。この辺に遊べる年齢の子供はいなかったため、必然的に何をするにも二人一緒だった。
私は地方の大学に出てしまったし倫太郎は兵庫の高校に行ってしまったから長らく会っていない。祖父母の家には度々来てはいたものの、お互いのタイミングが合わなかったため最後に会ったのは3年前だ。私の中の倫太郎はその時の記憶のままで止まっている。
などと過去に思いを馳せていると、倫太郎が祖父母宅に着いたようだ。ガラガラと扉を開ける音がする。
「なまえー、荷物持って行ってやりなー!」
「はぁーい」
遠方から来た倫太郎は荷物が多かったようで、寝間に運ぶようかり出された。倫太郎は元気にしているだろうか。大きくなってるんだろうな、と思っていたのもつかの間。玄関で見た倫太郎の姿に目を見開く。いや、大きくなってるんだろうなとは言ったけどこんなに成長する?男子高校生の成長期恐るべしである。久しぶりに見た倫太郎は身長は私の頭1個分を優に超え、体格もがっしりとしていた。そういえばバレーやってるとか言っていた気がする。日々の運動の賜物だ。
「あ、なまえ?久しぶり」
「久しぶり!倫太郎めちゃくちゃ育ったねー」
「なまえはちっちゃくなったね」
「私は大して変わってませんが?」
小さいのを強調するように頭にぽんと手を置かれる。その手のひらが大きくてまたしてもびっくりしてしまった。

◇◇◇◇◇


座敷はガヤガヤと騒がしい。親戚一同で集まるとだいたい宴会騒ぎになる。小さいころは早々に抜け出していたけど、成長した今そうは言っていられない。もうお酒が飲める歳なので、とコップにお酒をつがれる。お酒自体はそこまで苦手ではないが、アルコールが入ると親戚の人達はこちらに絡んでくるから苦手だ。今日も絡まれそうだ。そしてその予想は的中するのである。
「おうなまえ!飲んでるか?」
「あはは…いただいてます」
「もうなまえも飲める歳になったんだもんなァ。今幾つだ?」
「21です」
「ほぉー、20歳超えたら成人式も終わったし、もう次はアレだな。結婚式だな!」
「旦那の当てはあるのか?」
「もう20歳超えたらすぐよ、すぐ」
こういう結婚だのなんだの、ゴシップじみたこの手の話題が本当に好きだなあ…。その場はげっそりする私を尻目に盛り上がりだしてしまった。
「う、あー…はは……」
どうもこういった雰囲気は苦手で、愛想笑いしか返せない。誰か助けて欲しい…と思ったとき、そこに助け舟が出された。
「なまえー、ちょっと台所手伝って」
「はーい」
台所から呼ばれ、これ幸にと席を外す。台所に行くとそこには倫太郎がいた。
「あれ、何かお手伝いすることが…?」
「ないよ」
さらりと言ってのけた倫太郎は麦茶を飲み干した。倫太郎は私の分も麦茶を入れてくれ、それを飲みつつ今更ながらあれは私をあの場から抜け出させるための方便だったことに気づいた。
「ありがと〜、呼んでくれて助かったよ〜…」
「大丈夫だった?」
「倫太郎が呼んでくれたから平気。ああいう話題は凄く酒の肴になるみたい…」
この場で一番若いのは私なのでよく酒の肴にされがちなのだ。最近は富にそうだ。
騒がしい座敷から抜け出せたし、酔いも冷ましたいしと縁側で夜風を浴びることにする。縁側に座った状態から私は体を倒して寝転がった。冷たい廊下は火照った体に心地よかった。後から来た倫太郎が隣に座った。その手にはチューペットを持っているのが見えた。
「あ!いいな、私も食べたい」
「半分あげる」
「ほんと?ありがとう」
チューペットを半分に折り、片方を手渡してもらう。小さいころもよく二人で半分こしたっけ。あの頃と変わらず美味しい。
「そういやさ、聞こえたから言うんだけど」
「うん?」
「結局なまえは旦那の当てあるの?」
「?!…ゴホッゴホッ」
突然の話題に噎せる私の背を倫太郎がさすってくれる。
「いや……ありませんけど…?」
「彼氏もいないの?」
「…いませんけど!」
なんだこれ。羞恥プレイか。何で倫太郎に彼氏の有無の報告をしてるんだ私。
「そっか、良かった」
目を細め、いつくしむようにこちらを見やる。倫太郎のそんな顔初めて見た 。見たことの無い表情に少しドキッとしてしまう。


…というか良かったって何?


チューペットを食べ終わった倫太郎はそのままゴミを捨てに行ってしまった。縁側に1人取り残された私は顔の熱を冷まそうと必死だった。






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