×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




冬休みに入ったしせっかく休みだからと少し遠出して遊んできた帰り、電車に揺られながら窓の外を見ていた。すると家の最寄り駅まであと30分くらいのところで見知った顔が電車に乗り込んできた。
「あれ、なまえじゃん」
「やっぱり倫太郎だった」
「ふは、やっぱりって何」
乗り込んで来たのは私の彼氏である倫太郎だった。やっぱりと言ったのは彼が今日はスーツを着ていて見慣れない格好だったからだ。
「スーツだから最初人違いかと思って」
「まぁ見慣れないよね」
「スーツなんか着てどうしたの」
「遠縁の親戚の結婚式。さすがにウチの制服来てくわけにはいかなくてさ」
確かに稲荷崎高校の制服はそういった場には不向きだろう。個人的には好きなデザインなのだが。
しかし改めて彼を上から下まで見るととにかくかっこいい。180cmはある人の着るスーツはこんなにも破壊力があるのか。普段から身長が高くてかっこいいなぁなんて思っているが(本人には言わないけれど)、今日は特に脚が長いのが際立ってトキメキで目が眩む。股下何cmあるんだこれ。
「何そんなジロジロ見て」
「べ、別に!って、うわっ」
こっそりスーツ姿を堪能していたのがバレた。つっけんどんな態度しか返せず、これは見てましたと白状しているようなものである。そうこうしていると急に車内が揺れ、バランスを崩してしまった。
「おっと」
こけるかと思ったが、倫太郎が受け止めてくれたため事なきを得た。ぽすんと彼の腕に受け止められた瞬間、ふわりと香る彼の匂い。いつもと違う姿にそわそわしてしまっていたが、いつもの彼の匂いに安心した。たださっきより近づいた距離にどぎまぎしているのも事実である。
「あ、ありがと」
「なんか今日よそよそしいね?新鮮でいいけど」
「……気のせいじゃない?」
「俺がスーツだからかな」
沈黙していると彼はぐっと身を屈めて私の耳元に口を寄せた。
「……惚れ直した?」
「!」
そりゃあもう。何なら毎秒。口には出さないけど。そんなことを考えているのがわかってしまったのか彼は満足そうな顔をしている。
「なまえはこういうの好きなんだ」
「……うん。結構」
「将来俺と一緒になったら毎日でも見られるかもよ」
正直に言ったら言ったでこれだ。きっちり倍返しされた。私は消え入りそうな声でよろしくお願いします……と返すのでいっぱいいっぱいだった。






Back