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冬休み最後の部活ということで、部室の掃除もしたいしなぁと思って今日は早めに家を出た。てっきり一番乗りだと思っていたらそこには先客がいた。
「どうしたの赤葦、そんなとこで」
「おはようございます。なまえさん」
部室に向かうと後輩の赤葦がドアにもたれかながらしゃがみこんでスマホを触っていた。しかもまだ制服だ。
「それが昨日木兎さんに鍵を預けていたら忘れてきたそうで。学校に来てから気づいたらしく今頑張って取りに行ってます」
「あ〜…なるほどね」
それでここで待っているわけか。おそらく昨日も遅くまで残ってて鍵を返しには行かなかったんだろうな。スペアキーを借りに行くという発想はなかったらしい。私もと赤葦の隣に腰を下ろす。
「なまえさんは何でわざわざこっちに?」
「部室の掃除しようと思って。冬休みも最後だし」
「ああ、すごく助かります」
「毎年ひどいらしいからね……」
「去年の冬やばかったですよね…」
2人で遠い目をしながら思い出す。私は去年の春に部活に入ったため、その前を知らなかったのだが、毎年冬はGが出ると恐れられていた。それもそのはず、部室は端的に言って汚かった。その冬はGの処理から部室の隅々の掃除まで何から何まで担ったので、神と崇められた。都会っ子はGの退治すら出来ないのかこの軟弱者どもめ!と叫んでいたのは記憶に新しい。そして唯一赤葦だけはまともに手伝ってくれたのだった。今年は昨年の二の舞にしてたまるかと思い、掃除することに決めていたのだ。
「それにしても木兎遅いねー」
「おおよそどこかで道草でもくっているんでしょう」
「部室入れないと何も出来なくて暇だね」
「着替えもままなりませんからね」
着替え自体は私は女子更衣室で出来るのだが、さすがに男子部員に貸すわけには行かない。本当にやることがなくて暇そのものだ。
「赤葦〜、なんか面白い話して」
「なんスかその無茶ぶり」
ちょっと無茶を言ってみる。それが許されるくらいの仲だという自信はそこそこにある。
「面白い話……」
「ちゃんと考えてくれる赤葦優しい」
「優しいのハードル低くないです?」
「だって皆流すんだもん」
別に面白い話じゃなくてもいい。暇がつぶせればいいのである。
「あっ、別に面白い話じゃなくてもいいよ。そうだ恋バナしよ」
「急ですね」
「赤葦のそういう話聞いたことないし。そういえば最近木葉はまたフラれたって聞いた」
「あ〜…今度は3ヶ月でしたっけ。早いな…」
木葉はモテないこともないが基本的に長続きしない。だいたい部活が忙しいから相手からフラれるのがいつものパターンと化している。最短は2週間だったはずだから、今回はまだよく持った方ではないだろうか。
「…そういうなまえさんはどうなんですか」
「えっ私?」
「なまえさんのそういう話もあんまり聞いたことないんで」
上手にこちらに矛先を向けてきた。私のそういう話…といっても大して経験もない。
「う〜ん。好きな人もいないしなぁ…。私の好みのタイプっていうのが皆曰くハードルが高いらしくて」
「そんなに高望みしてるんです?」
「そんなことないと私は思うんだけど」
毎回自分の彼氏にしたい人の条件を言う度無理でしょと返される。好みのタイプというよりは付き合う条件なのでそこまで難しいだろうかと思っているのだが。
「まず、部活を優先しちゃうの許してくれることでしょ」
「木葉さんの例がありますもんね」
「そうそう。それ1番大事なの。それから私より身長高くて、私と一緒にバレー楽しめて……後はまあ私のこと大事にしてくれる人がいいかな」
「なるほど?」
「まあ最初の条件の時点で無理でしょって言われがちなんだよね。あと身長も私そこまで低くないし」
「なまえさん身長平均以上でしたっけ」
「そうだよー。でも180ある赤葦から見たらそんなに変わんないか」
クラスでそういう話になり、この条件を言ったとき微妙な顔をされた。まあ花の女子高生が部活優先で許してと言うのは珍しいだろうけど。
「……なまえさん」
「ん?なぁに?」
「それ、俺とかどうですか」
「へ?」
「その条件、俺なら全部クリアしてると思いますが」
「え……?あ、赤葦、私のこと好きなの……?」
「はい。結構前から」
「知らなかった…」
「言ってませんから」
そりゃあそうなんだけれども。確かに赤葦だったら同じ部活優先するタイプだし、身長は私よりも高くて、一緒にバレーも楽しんでくれる。あれ?あれあれ?これはもしかするのでは?
「俺、ちゃんとなまえさんのこと大事にしますよ」
「理想が現実に追いついてきちゃった…」
返事をすべきなのだろうかと迷っていると木兎の声が聞こえる。鍵を取りに行って帰ってきたのだろう。他の部員の声もするから合流して来たのかな。
「木兎さん帰ってきましたし、返事は後でいいですよ」
それだけ言うと、赤葦は木兎が開けた部室へすっと入って行った。この後部室の掃除をと思っていたが、これは悠長にそんなことしている場合ではなさそうだ。






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