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部活が終わっていつものように下駄箱の傍へ行く。普段なら彼女のなまえがそこで待っていてくれるのだが、今日はその姿がなかった。何か彼女の身にあったのだろうか。スマホを見るも返信はない。ひとまず思い当たる場所をまわってみることにした。
俺の部活が終わるまで何をして待っててくれてるの?と以前聞いたことを思い出す。真面目なところがある彼女はだいたい課題か予習をしてるよと言っていたように思う。それなら図書室か教室あたりだろうか。
まずは図書室へ向かう。しかし図書室に明かりはついておらず、すでに鍵がしめられていた。だったら教室の方だろう。図書室から踵を返し、彼女のクラスへと向かう。
教室は煌々と明かりがついていて人の気配がした。教室へ入ると彼女がいた。ビンゴだ。机にノートを広げたまま、彼女は眠っていた。
「なまえ」
「……う、ん…」
声をかけてみるが起きそうにない。彼女は最近、俺に弁当を作ってくれている。そのため朝早くから起きており、眠くなってしまったのだろう。今日は週末だから尚更疲れもたまっていると思う。彼女に余計に負担をかけているかもしれない。それでも彼女に弁当を作ってもらえるのは嬉しいから止めることは出来なかった。
彼女の前の席に座る。その寝顔は普段より幼く見えた。いたずら心に負けて頬をつついてみるが、やはり起きる気配はない。時計を見るともういい時間である。彼女の寝姿を堪能していたいがそろそろ帰らなくてはいけない。
「なまえ、そろそろ起きて。あと制服皺になっちゃうよ」
「……う〜ん…、ん?え、京治くん?!」
目が覚めた彼女は驚いている。
「うわ〜…結構寝ちゃってたみたい…」
「いつくらいまで起きてたの」
「えっと、……5時半くらいまでの記憶はあるよ」
ミルクティーが温くなっちゃったな、と彼女はつぶやいている。
「いつも遅くまで待たせてごめんね」
「いいの、私が一緒に帰りたいだけだから」
「あと、弁当ありがとう。今日も美味しかった」
「本当?お粗末さまでした」
弁当の感想を伝えると彼女はとても嬉しそうにするので、その顔が見たくていつもきちんと感謝を伝えるようにしている。そもそも事実彼女の作る弁当はとても美味しいのだけれど。
「帰ろうか」
はーいと返す彼女はカバンに荷物を入れ、肩にかける。そういえばミルクティーが温くなってしまったとさっき言っていたな。代わりに何か温かいのを買ってあげようかな。そう考えて帰り道の途中の自動販売機に寄る。
「なまえ何がいい?」
「えっ、いいよいいよ」
「いつも待っててくれるお礼」
「う〜ん、じゃあミルクティーで」
ミルクティーのボタンを押し、ボトルを取り出して彼女に手渡す。
「なまえはミルクティー好きだね」
「ふふ、今はね一番好きな飲み物だよ」
今はとはどういうことだろう。ボトルを両手で持ち、暖を取りながら彼女は続ける。
「付き合う前にもね、京治くんがくれたの」
「俺が?」
「覚えてないと思うけど、1年生のころに」
そう言われてハッと思い出す。その日は気温が低く、とても冷える日だった。冷えからか体調を崩したのか、廊下で蹲る彼女を見つけた。保健室まで連れて行き、そしてたまたま手に持っていた買ったばかりのミルクティーを手渡したのだ。
「あの頃からね、ミルクティーも京治くんのことも好き」
ほんのり頬を染めて言う彼女に胸が熱くなった。そんな些細なことをずっと覚えてくれていたなんて。俺にとってもミルクティーが特別な飲み物になりそうだなぁなんて思った。






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