×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




帰ってくるなりドタンバタンと玄関から大きな音がする。痛っ、とか聞こえてきたけど大丈夫だろうかとちょっぴり心配になる。そして勢いよく居間の扉が開いた。
「た、ただいま」
「おかえり倫くん。どっかぶつけてない?」
多分膝とかぶつけたんじゃないかな。何となく彼がここまで慌てふためいている原因に心当たりはある。それはそれとして湿布はどこに置いたんだっけ、と私はぼんやり考えた。


◇◇◇◇◇


「完ッ全に誤解だから」
「わかってるよ」
自室の引き出しに湿布を置いておいたのを思い出し、倫くんの膝に貼る。貼り終わるやいなや、正面からぎゅっと抱きしめられた。
「ほんと……ほんとに俺にはなまえだけだから……」
「わかったから倫くん、ちょっと離れない?」
「えっ俺とくっつくの嫌なの」
そういうことではないんだけれど。珍しく不安げな彼の顔にきゅんときてしばらくそのままでいいよと告げた。割とどぎまぎしてしまってそれどころじゃないが。
ここまで狼狽しているのはまあこれが原因なんだろうなと机の上の週刊誌をちらりと見やる。それに気づいたのか倫くんはさらにぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。私の心拍数も限界なのわかってるんだろうか。
「週刊誌に撮られたけど誤解だから」
「わかってるってば」
週刊誌に撮られたのがよっぽどショックだったのかな。見出しには『バレーボール日本代表・角名選手、熱愛発覚か』の文字が並ぶ。どうやらお相手は一般女性らしいけどどう見ても私ではない。その点は良かったと言えば良かったかもしれない。
日本代表になってからメディアにも出ることが増えた反面、こういうことも増えだした。
「……どうせ撮られるならなまえとか良かった」
「こらこらこら」
「だってこれ侑の彼女だし……。侑待ってる時にやられただけだし……」
なるほどそういうことだったのか。というかそれ言っちゃって良かったのか。顔しか知らない宮選手に知っちゃってごめんなさいと心の中で謝る。
「なまえ、侑の彼女だって知ってたの?」
「ううん」
「その割に落ち着いてるじゃん」
まさか俺に愛想つかした…?と彼は眉を下げる。今日はえらく情緒不安定だな。そんな一面も可愛いと思ってしまうあたり私もなかなかに彼に関しては盲目的だ。
「そりゃあいい気分ではないけど。倫くん私のこと好きじゃん」
「好き。超好き」
そこまではっきりド直球に言われるとさすがに照れてしまう
「ほ、ほら。だったらいいじゃん。私ちゃんとわかってるよ」
わかってるから、だからそろそろ離れて欲しい。心臓が落ち着くどころかもう限界だから。しかし倫くんの顔を見るとどこか不満げである。そして私の視界は気づけば部屋の天井へと移り変わっていた。
「ん?あれ?」
「なまえ多分わかってないよ」
背中は床に付いているし、倫くんには覆いかぶさられていて逃げ場などない。
「あの、倫くん……?」
「俺がどれだけなまえのこと好きかわかってない」
だから身をもって覚えてね、と言われて私は慌てる。待ったをかけようとしたけれど、抗議の声は彼の唇によってねじ伏せられた。






Back