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※夜久くん視点



人の金で食べる物は美味いとは言うけれど、俺は眉間に皺を寄せながら黒尾に奢られたシェイクを飲んでいた。
「……で、何だよ。『助けて夜久!!』とか言ってきたから部活の相談かと思った」
某ファーストフード店。目の前には神妙な面持ちの黒尾鉄朗。奢るから食べながら聞いてくれと言われて来たものの、黒尾がなかなか切り出さないから既にポテトとハンバーガーは俺の胃の中だ。
さらに追加してやろうか、と思っているとやっと切り出した。
「その、あの子の家にお呼ばれしまして……」
「えっ」
驚いてシェイクを落としそうになった。あの子というのは俺の幼なじみであるみょうじなまえのことだ。俺を通じて二人は知り合い、今では黒尾はなまえに思いを寄せている。なかなか進展しない二人の仲なのにさっきの発言だ。いつの間にこいつらの仲は進展したんだろう。
「確認するけどお前らもう付き合ったの?」
「……まだです」
少しでも二人の仲が進展したと思った俺が馬鹿だった。こいつは見た目に反して意外にも奥手でなかなか進展しない。なまえもなまえで奥手なので、俺が世話を焼くこともしょっちゅうだ。
「ヘタレ。臆病者。奥手すぎんだよこの野郎」
「返す言葉もございません……」
そもそもそのお誘いもこの間お膳立てしてやった時のだという。なまえの手料理の話で盛り上がった後、今度食べに来る?と誘われたらしい。何でそういうことは平気で言えるんだろうあいつは。
「どうしよう夜久。何着ていけばいい?正装?手土産いる?」
「落ち着け」
おそらく気にするべきはそこじゃない。何が悲しくて180cm超のでかい男が照れている様を見せられているんだ俺は。
時計をちらりと見ると約束の時間まであと少しだった。もう少しだな、と思っていると予想していた姿が席に現れた。
「やっと見つけた!衛輔、聞いて……よ……って黒尾くん?!」
正面の入口から入ってきたなまえは壁際に座る黒尾に気づかなかったようだ。走ってきたのか髪が乱れているが、それを慌てて直している。
なまえもなまえで昨日夜中に電話で『助けて衛輔!!』とヘルプを出してきたのだ。何時だと思ってるんだよ、明日にしてくれ、と電話を切ったのだった。
もう当人同士でどうにかしろ。その方が断然手っ取り早い気がする。
「じゃあ、あとはお二人でどうぞ。黒尾、ご馳走様」
「ちょっと待てよ夜久!」
「待って待って衛輔!」
慌て出す二人を後目にトレーを返却に行く。研磨もぶん投げたんだから俺もぶん投げていいと思う。大丈夫だよ、お前ら似たもの同士だし。くっつくのも時間の問題だろ。お似合いだと思うよ、俺は。




三題噺・お題:『正装』『あの子の家』『臆病者』




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