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クリスマスイブとは言えど強豪校である梟谷学園バレー部は普通に練習がある。ただ、顧問の先生がこういう時ぐらい家族サービスをしないとな!と午前中のみの部活となった。午後はオフだということを彼女のなまえに伝えると、自身の部活も午前中までだという。せっかくだからどこかに出掛けようかと提案すると、二つ返事で部活終わりに待ってるね!と返ってきた。
どこかに出かけるとは言ってもあまり遠出は出来ない。そのため、近くのショッピングモールに行くことにした。そのショッピングモールには小さめではあるが観覧車がある。いつぞやのデートでなまえがここのショッピングモールの観覧車に乗りたいと言っていたのを思い出したのだ。
部活終わりの彼女はとても嬉しそうだった。俺のエナメルバッグを引っ張って早く早くとはしゃぐ様が愛おしいと思った。


◇◇◇◇◇


遅めのお昼を済ませ、屋上へ向かう。観覧車に乗れるのも嬉しいけど、乗りたいって言ってたのを覚えてくれてたことが何より嬉しいんだと彼女は言った。この子は的確に俺の心臓を掴みにくる。
観覧車に乗ると街が一望出来た。
「クリスマスなのにあんまりデートらしいデートが出来なくてごめん」
「え?楽しいよ!それに私、バレーに一生懸命な京治が好きだから」
いじらしい彼女に胸を打たれながら、そういえばと思い出す。せっかくのクリスマスだしと、彼女へプレゼントを用意しておいたのだ。
「なまえ、これ」
「わぁ!ありがとう」
開けていい?と彼女が言うのでどうぞと頷く。俺が用意したのは手袋だった。彼女の方が部活が終わるのは早いため、いつも帰りに待たせることになっている。先に帰ってくれてもいいが、彼女は頑として曲げないだろうし自分もなるべく一緒に居たい。手を擦りながら待つ彼女の寒さを少しでも和らげられればと思ったのだ。
その手袋を見ながら急に彼女は笑いだす。
「プレゼント被っちゃった」
彼女から包みを受け取り、中を見ると手袋だった。考えることは同じなのかもしれない。
「さっきも言ったけど、バレーに一生懸命な京治が大好きなの」
そんなセッターの大事な手だからとなまえははにかみながら言う。俺は本当に彼女に大事にされている。そう思うと自然と頬が緩んだ。
観覧車が下に着いたので外へ出ると、雪が降り始めていた。ホワイトクリスマスだねとなまえは微笑んだ。
「今年は手袋だったから、来年はマフラーにしようかなぁ」
「来年も俺と一緒に居てくれるんだ?」
「当たり前じゃん」
当たり前と彼女は言うけれど、俺はそれが心の底から嬉しい。それを彼女はおそらく知らないだろう。来年の冬にかけてゆっくり伝えられたらいいと俺は冬空の下未来に思いを馳せた。



三題噺・お題:『雪』『観覧車』『エナメルバッグ』




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