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来たる10月5日、私は遠い親戚筋である宮家を訪問した。こちらから出向くのは久しぶりである。昔はよく親戚一同で集まることも多かったが、大きくなった今はあまり集まることもなくなってしまった。宮家の双子は私とは3つ歳が離れており、昔からなまえちゃんなまえちゃんと懐く様はとてもとても可愛かった。
「こんにちは〜。お久しぶりです、なまえです」
「いらっしゃいなまえちゃん。待ってたんよ」
予め連絡をしていたので、宮家の母が出迎えてくれた。荷物だけ渡して帰ろうと思っていたのだが、宮母の上がっていってという押しに負け少しだけ上がることにした。お邪魔します、と入るとリビングに通される。久しぶりに来た宮家は記憶の中とそう変わりなかった。それに反して双子は大きくなったよなぁ。
「あ、ごめんなさいお茶まで。ありがとう」
「いいんよ〜。わざわざお祝いもってきてもろたんやし」
そう、今日は双子の誕生日なので今回の訪問はお祝いのプレゼントを渡すことが目的だった。普段は郵送にしていたのだが、今年はたまたま帰省のタイミングが合ったため直接来ることにしたのだ。久しぶりに双子の顔を見たかったのもある。
「でもあの子らには言うてないんよな」
「えっ。じゃあ私がいたら何でいるのってなるじゃん」
「いや喜ぶやろ。特に侑は」
宮母はそう言うが本当にそうだろうか。少しの不安を抱えつついれてもらったお茶を飲んでいると、玄関からどたどたと音が聞こえてきた。
「ん?この靴オカンのとちゃうな」
「お客さんやろか」
目ざとく私の靴に気づいた双子はリビングへやってきた。
「って、あ!なまえちゃんやん!」
「ほんまや。なまえちゃんや」
「久しぶり。お邪魔してます」
リビングに入ってきた双子の両手を見るとプレゼントらしきものがたくさん詰められた紙袋を持っていた。学校でもたくさんもらってきたのだろう。
「なまえちゃん来るんなら言うてや〜!」
「荷物だけ渡して帰るつもりだったんだけど」
「私が上がっていきって言うてん」
「オカン、グッジョブや」
ソファに座っていた私の後ろからぎゅうぎゅうと抱え込むように侑は絡んでくる。昔からパーソナルスペースが双子は狭いと思っていたけど、侑はより狭い気がする。はよご飯食べてまい、と宮母に言われ双子は食卓についた。私もご飯を勧められたのだが、既に食べてきていたため遠慮させてもらった。


◇◇◇◇◇


「はい、これプレゼント」
「ありがとぉ!」
「ありがとぉ」
プレゼントを渡したあと、治は宮母に呼ばれて向こうへ行ってしまった。なのでリビングには私と侑が残った。
「大したものじゃないんだけどね」
「そんなことあらへん、嬉しいで。そもそも来てくれただけでめちゃくちゃ嬉しいもん」
「侑はいい子だねぇ」
ついつい可愛いなと思って侑の頭をなでた。侑は微妙な表情だ。子ども扱いが良くなかったかな。そう思って下ろそうとした手は侑にとられてしまった。
「なまえちゃん。俺な、来年18になるねん」
「?、うん」
「来年もウチ来てくれる?そんで来年はな、欲しいもんあんねん」
「私に用意出来るならするけど?」
なんだろう。男子高校生の欲しいものがわからなくて毎年悩む私にはさっぱり検討がつかない。
「来年のプレゼントはなまえちゃんが欲しいねん」
「はい?」
「昔からずっと好きやねん。いつも言うてたやろ?お嫁さんになってな、って」
過去の記憶がフラッシュバックする。幼い侑は私に会う度『大きくなったら俺と結婚してな!』『なまえちゃん俺のお嫁さんになってな!約束やで』と言っていた。
スマホが鳴り、電話に出ると言って侑はリビングを出ていった。入れ替わりのようにして治が入ってくる。
「なまえちゃん」
「な、何ですか…」
「あいつあれでも本気やで」
「聞いてたの?!」
「ウチ台所とリビング筒抜けやねん」
「もっと早く言って!!」
めちゃくちゃ恥ずかしいやつじゃん!でもな、と治は続ける。
「それだけやなくて、あいつしょっちゅうなまえちゃんのことばっか言いよるから」
「私のことを?」
「好きや〜とか可愛ええ〜とか、まぁしょっちゅう。それにあいつモテるけど告白全部断っとるで」
なんてことだ。本気も本気だということがわかってしまった。
「来年は俺とツムのプレゼント別で大丈夫やで。ってか一緒のもんに出来へんやろし」
今年もありがとう、大事に使わせてもらうわとだけ言い残して台所へお茶を飲みに行ってしまった。
こちらがサプライズしに来たというのに、逆にとんだサプライズをされてしまった。今のことでいっぱいいっぱいの私に来年のことを考える余裕など少しも存在しなかった。






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