夕陽色



「な、……いきなり、なに?」

「違うのか?」

「だから なにが!」

「…水野が、成田を好」

「そんなこと、ないっ」



終わったと。

クラス中に知られて彼の前で恥をかいて、最悪まだなにも始めていないのにフられるのかもしれないと。


ただ、怖かった。


強く否定すればするほど、それが事実だと認めているようなものだと分かっていた。

分かっていたけど、実際声を張り上げずにはいられなくて。


足下がぐらついて、手のひらの汗が止まらなくて、「どうして!」と大声で叫びたかった。






「どうせその様子だと、友人にも言っていないのだろう?」

「だから、なにを、」



「…あるだろう?そこに、吐き出せずにしまってしまったものが」


「っ、」



緑間くんの指が、長い人差し指が私の左胸をさす。



…あぁ、彼は違うのだ。


からかいや、興味、疑問を抱いているのではないのだ。


確信している。

私の中に彼の存在があることを。


なぜ気付いたのかは、知らないけれど。



知っているのだ。

そしてそれを、…………どうしたいのだろう?




「…お見通し、なんだね……」

「…」

「どうして?」

「………安心するのだよ。誰かに言うつもりはない。弱みを握ったと、脅すこともない」

「…うん」




オレンジ色の窓の外を見つめながら、こちらから視線をはずして真剣にそういう彼の言葉に、嘘は感じられなかった。



「…いいぞ」

「えっ?」

「胸に留め続けることが難しくなったなら、その時は聞いてやるのだよ」




だから頼れ、と。



そういって振り向いた彼の顔を、私はきっと忘れない。


いつものかたい表情となにが違うのか分からないのに、なんだかひどく切なくて、温かかった。



…この感情も、知らない。

近頃知らないことばかり私の中に溢れてくるのはどうしてなのか。

これはなに?

どう、言葉にすれば彼に伝わるの?






「…緑間くん、」

「なんだ」

「部活、行かなくて良いの?」



「…………ふっ。今から行くのだよ」




分からないから、言葉にはしなかった。

ただこれから、少しずつ分かっていく度に伝えていけばいいかなと。





初めて見た彼の笑った顔も、私はきっと忘れないだろう。


あんな優しくキラキラした表情は、だって。


泣きたくなるほど、きゅ、と私の心臓を締め付けたから。

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