あなたと噂になるのも悪くない






「名前!!」




いつになく焦った顔つきで走ってくるのは、黄瀬涼太。
秘密裏に付き合ってる彼氏だ。




「なに?」







「ほんっとうにごめん!!」







「いや、だから何が?
てか、ここだとすんごい目立つんだけど…。」




ただでさえコイツはモデルをやってる目立つ側の人間なのに、
こんな土下座せんばかりの勢いで謝られたら、私が悪者になる。




実際、もう既になりかけてるのかもしれないが…。




トゲトゲと刺さる視線がうざったい。




「とりあえず場所を移動してから話そうか。」




しゅんと項垂れたままの涼太をせっついて、その場を離れた。









「で、何でそんなに謝ってきたの?」




所変わってバスケ部の部室。
今日は朝練がないから、私たち以外人は来ないだろう。
なんだかんだで人の来る屋上よりかはよっぽど安全だ。




「これっス…。」




そう言って差し出してきたのは、一枚のスナップ写真。




「これってこの前遊園地に行ったときの…?」







「どっかの雑誌記者がいたらしくって、写真に撮られちゃったんス…。
来週発売の週刊誌で特集記事組まれるって…。」







「で?」







「え?」




きょとんとした表情で見上げてくる涼太。




「アンタがモデルやってる時点で覚悟はしてたよ。
それともこれのせいで私が別れようなんて言うような人間に見える?」




ご生憎様。
私はこんなゴシップ記事でへこたれてあげられるほど繊細な人間じゃない。




「むしろこれで公認じゃん?
隠す必要なくなるなら、私はそれでいいけど。
涼太は知られたら困る?こういうの。」







「名前〜〜〜〜〜!!!」







「わっ。」




今までのしおらしさが一気に消えた。




「めちゃくちゃ不安だったんス…。
今までこういうことになったことなかったし、
なっても別に何とも思ってない女子だったから、どうでもいいやって思ってて…。
でも、名前は本気で好きだし、これで別れようなんて言われたらもう…って。」







「ばーか。私はそんな柔な女じゃないよ。
大丈夫。絶対に涼太と別れようなんて言わないから。」







「名前、大好きっス!!」







「うちも大好きだよ。」




あなたと噂になるのも悪くない




「名前、黄瀬君と付き合ってるってほんと!?」




「それが何か?」




「くわぁ〜、まさか名前が黄瀬君と付き合ってるとは思ってなかったわ。」




「うちは応援してるからね!」


世の中、案外捨てたもんじゃないみたいだ。


end





落下星様提出


2012/08/13.


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