君の隣で感じる温もり
「名前っち!」
「ん?なに、涼太。」
振り返ると片手に傘を持った涼太がいた。
「ん?じゃないっス!
何びしょ濡れで帰ろうとしてるんスか!?」
ぐい、と腕を引かれて傘の中に入る。
半ば強制的に。
でも、やっぱりされるがままになる。
「涼太、練習は〜?」
「台風が近いらしいんで、中止になったんス。」
あ〜。
だからこんなに早いのか。
「涼太〜。」
頭一つ分くらい上にある涼太の顔を振り仰いだ。
「何スか?」
「ありがとう。」
ふにゃり
そんな効果音がしそうな程、柔らかく表情を崩した
「…名前っち。
その表情、反則っスよ?」
大きな手のひらで、濡れた髪を優しく梳いてくれた。
あぁ、安心する。
瞳を閉じて、その温もりをただ感じた。
嵐に近い雨なのに
私達の周りは
どこか
温もりに満ちていた。
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