海辺の恋に 【6/7】
「幸先輩。」
「なん……うおっ。」
振り返ると同時に顔に掛かった水。
しょっぺぇ…。
「はははっ、引っ掛かったー。」
楽しそうに笑う名前。
ちょっとカチンときた。
「やったな。」
「わっ。」
腕を掴んで、海に押し倒した。
長い髪が海の中で泳ぐ。
俺自身も中へ潜った。
すぐ下には名前が居た。
手を伸ばせば、指が絡み合う。
時が止まったみたいな錯角に陥った。
たった数秒だったのかもしれない。
どちらからなんてわからない。
でも、確かに重なった唇。
海だけが見ていたそんな俺らを見ていたのは
広大な
海だけ。
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