モデルと迷子君
「じゃあ、とりあえず荷物を置きに行くか。」
春休み、ということもあってか京都駅は予想以上に混んでいる。
征君の声が掻き消されそうなくらいに。
「あの〜…、」
「どうした、涼太。」
「紫原っちがいないっス…。」
涼ちゃんの言葉に、全員がバッと振り返った。
確かにあの緩い顔がない。
え、まさかの迷子!?
「あんのバカ!」
「赤司、本音が漏れてるのだよ。」
「かったりー。
さっさと宿に行こうぜ。」
「いや、それはダメでしょ!
ちゃんとムッ君捜さないと…。」
「どーせアイツのことだから菓子でも買ってんだろ?」
ふわぁとこれまた大きな欠伸をする大輝。
うん、100%そうだと思うけど!
「紫の髪のヤツなんてそうそういないから、すぐ見つかんだろ。」
「いや、ここに居る人のほとんどの髪の色は普通じゃないですよ。
立ってれば自然と目立ちますし。」
「うっせーよ、テツ。
つか、モデル!さっきから野次馬うるせーんだけど!?」
「いや、すんません。
ほんと、こーいうつもりじゃなかったんスけど…。」
「涼ちゃん、がんば。」
キャーとまた黄色い悲鳴があがった。
あぁ、初っ端からグダグダじゃん!!
モデルと迷子君『えーっと、迷子のお知らせです。
紫原敦君がただいま駅長室にてお連れ様をお待ちしています。
お心当たりのある方は、至急駅長室へいらしてください。』
「まさかの迷子のお知らせ!?」
「大学生にもなってアイツはバカか!?」
「……紫原君。」
「……仕方ない。
迎えに行くぞ。」
押し寄せてくる人並みを掻き分け逆流していく。
流れ行く先にいるのは……
「ちょっ、ほんと勘弁してください。
俺、置いて行かれちゃう……って、待つっス!!」