プレリュード
「雨蒼。」
「なに、征十郎。」
微かな月明かりと
小さな電気の明かりしかない一室。
微かに見えるのは
独り、真ん中に座り込む少女と
彼女を取り囲むようにして置いてある沢山の本棚。
そして、そこから溢れ返った多量の本。
「飯の時間だ。」
ジャラリ重い鎖の音が響いた。
それは月明かりをうけて、
鈍い輝きを魅せる。
そしてそれは、
「そこに置いといて。」
彼女の細い足首へと繋がっていた。
「残すなよ。」
コト小さな音を立てて、食器が置かれ
部屋を出て行った。
前奏曲必要最低限のものと本しかない空間。
枷のされた足。
それはまるで…、
鳥籠のような空間だった。