8;00
「哀恋、宮地君が来たよ。」
「あ、うん。」
“明日、8時に迎えに行くから制服来て準備しとけ。”
昨日、送ってくれたその別れ際に言われた言葉。
どこに行くんだろう。
「ごめん。待った…よね。」
「おせーよ。
ほら、さっさと行くぞ。」
玄関を開けて真っ先に飛び込んできたのは
ハンドルに両肘を掛け、組んだ手に顎を乗せてる彼。
「ぼーっとしすんな。
ほら、後ろ乗れ。」
カバンを獲られ、荷台を顎で指す。
「え、でも、」
「お前1人くらいどーってことねぇよ。
バスケ部ナメんな。」
「…怪我して練習出れなくなっても知らないからね!」
「はっ、上等!」
荷台に跨って腰に腕を回せば軽やかに走り出す自転車。
「……ねぇ、」
「あ?」
「さっきの…あの会話、前にしたことある?」
「あったかもなー。」
風を切る音が、加速を知らせる。
8:00ほんの一瞬の幸せ。