9;15
目を覚ますと、9時を回っていた。
少し、寝坊をしたみたいだ。
「あら、哀恋。
やっと起きたの?」
「…お母さん。」
どうしよう。
訊くべきか。
夢のことが事実かどうなのかを。
でも、
散々迷惑を掛けてるのにこれ以上…。
「哀恋。
言いたいことがあるなら言いなさい。」
静かな優しい声だった。
「え?」
「もう18年も貴女の母親をやってるんだもの
それくらいのこと、わかって当然でしょ?」
ふふふ、と笑みをこぼすお母さん。
「…ねぇ。
私が遭ったのってバスとの接触事故?」
「…そうよ。
幸い乗客の皆様にケガはなかったみたい。」
あぁ・・・。
「思い出したなら、哀恋?
貴女にはやらなくちゃいけないことがあるんじゃないの?」
シガラミに捕われてしまった彼へ。
「宮地君ね、哀恋さんをバスに乗せてもいいですか?
って、高尾君と一緒に家へ頭下げに来てくれたのよ。」
そんなの、教えてくれなかった。
「哀恋。貴女は幸せ者よ。
きっと世界で1番の。」
9:15記憶がある今じゃないと出来ない事が。