儚くも美しい姿
「紗枝先輩…?」
旧館へ続く渡り廊下。
そこで、控えめに声をかけてみる。
「…若松君?」
「紗枝先輩?!
その腫れって…。」
「あぁ、これ?
ははは、そんなに目立つ?」
「…それ、もしかして主将…。」
「それ以上言わないで。」
吐き捨てるように言った。
…何も言えず、ただ紗枝先輩の隣に座った。
遠くでチャイムが鳴る。
「………ほんとはね、
わかってるんだよ。」
しばらくの間の後、
静かに語りだした。
「こんな関係おかしいって。
…翔一は私のこと、“奴隷”って言ってるしさ?」
「でもね…離れられないんだよね。
どうしてだか自分でもわからないけど。」
そう言って弱弱しく微笑んだ。
それはとても儚い笑みで。
でも、とても美しくて、
儚くも美しい姿そんな表情の貴女に、
俺は、
どんな言葉をかけていいのかわからなくて。
ただ横で小さな手に自分の手を重ねた。