あまりにも歪な
「あの、主将。」
「ん?
どないしたん、若松。」
「今日、朝練終わった後に紗枝先輩が来たっス。
“今日は一緒に帰ってくれるの?”って。」
すぅ、と細い瞳がさらに細くなった。
「…そうか。
わざわざすまんの。」
「いえ。」
なんでだ?
主将の纏っていた空気が一瞬で変わった。
紗枝先輩は主将の彼女じゃないのか…?
少なくとも朝の紗枝先輩の様子だと
そう見えた。
けどなんだ?
この主将との温度差は。
そもそも、紗枝先輩の言葉もおかしい。
普通なら“一緒に帰ろう”だ。
………
立ち止まって、
後ろを振り返る。
すると、主将の背中が人ごみの中で浮いていた。
そんな錯覚を覚えた。
あまりにも歪なその時見た主将の顔は
今まで見たことのない顔で。
歪んで、見えた…。