背中を押された
「ねぇ、東雲さん。
惨めだと思わない?」
「翔一のことを崇拝してる人の方が
よっぽど惨めだと私は思うけど?」
「ふーん。
大人しそうだけど、案外言うんだ。」
「悪い?」
「ぜーんぜん。」
クスクスと楽しそうに笑みすら零すクラスメイト。
「私ね、結構東雲さんのこと好きよ。」
ガラリと雰囲気が変わった。
あぁ、そうか。
どこか感じてたこの匂い。
彼女の匂いは翔一のそれだ。
「似た者同士、だったわけ?」
「ご名答。
だからね?
アイツが貴女に依存したがるのもわかる。」
今まで向けられてきた憎しみ、嫉妬の瞳と
今向けられてる嘲笑、憐れみの瞳は含んでる意味合いが違う。
彼女が私に向けるのはきっと。
背中を押された慈しみと、
「そして、その依存は
貴女が拒絶することで終わる。」
好奇心だ。
それも飛びきり純粋な。
「ありがとう。
えっと…?」
「希咲−キサキ−よ。」
そう静かに微笑んだ。