崩れ始めた均衡
「ありがとう、若松君。」
「俺は何も…。」
「ううん。
今日初めて顔を合わせたのに変だけどさ。」
若干自嘲気味に笑う。
「でも、若松君の言動が私に勇気をくれたんだよ。」
「俺はただ先輩が、「ははは」…主将?」
急に笑い出した主将。
それはまるで、
壊れた人形のような声だった。
「翔い…、」
「ふざけるんやないで。」
ぞっとするような冷たい声。
一切感情が感じられない。
「ホンマにもう戻る気はないんやな?紗枝」
「当たり前じゃん。」
「そうか。
…なら、お前の大事なもん全部壊したる。
明日から、ちゃんと覚悟して学校に来るんやで?」
崩れ始めた均衡「上等じゃない。」
「そう言ってられるのも今のうちやで。」
今まで歪ながらも保たれていた均衡が
一瞬にして崩壊を始めた。