『1、傘立て』【PS追加END波乱の新学期】 | ナノ
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私は、とっさに傘立てに目をやった。
ばかっ!!
傘立てにどうやって隠れればいいのよ。
こんな時に、あわてている場合じゃないわ。
「危ないっ!!」

校長の素早いゴルフクラブの一振りが私をかすめる。
切れた耳たぶから血が流れ出した。
どうしよう!?
私は、とっさに傘を取って構えた。
校長は再びクラブを振り上げると、私に向かって振り降ろしてくる。

私はがむしゃらに全体重をかけ、傘を前に突き出した。

傘の先は校長の胸に刺さっている。
私は傘を離した。
……やってしまった。
頭の中では罪の意識と、助かったという安堵感が錯綜している。
校長は傘を手に取ると抜いた。

そして、傷口から噴水のように吹き出した血が、私に降り注ぐ……。
彼は床に崩れ落ちた。
……終わったのね。
そう思いながら茫然と立ちすくんでいると、雷が鳴り響いた。
窓の外は暗くなっている。

そして、校長室は徐々に闇に包まれていった。

「契約成立」
どこからともなく、声が響いた。
そして、その声と共に校長の体はミイラ化していった。
いったい何が起こっているの?
私は何をしたらいいのかわからずに立ちすくんだ。

そのとき、校長室の窓ガラスが割れ、風が吹き込んできた。

窓からは宙に浮いた人形が静かに近づいてくる。

人形は部屋に入ると、荒井さんの姿に変貌していった。
私は校長室から逃げ出した。
どこをどう通ったのか覚えていない。

そして、気が付いた時には、自分の部屋にいた。
あれは何だったのかしら。
考えてもわからなかった。

……次の日からは、いつもの日常だった。
人形もあの日以来、現れない。
あの出来事は、夢だったとすら思える日々が続いた。
夏休みもあけようとしている。
たまっていた宿題を片付けなければ。
そんなことを思えるほど私の心は落ち着いていた。

平和な証拠だわ。

……そして新学期が始まる。
私は学校に着くと、校門で少し足を止めた。
あれは夢だったのよ。
そう思って勢いをつけて入った。
大丈夫。
いつもの学校じゃないの。
繰り返し、そう呟く。

始業式に、新しい校長の紹介があった。
前校長は病気療養のため、休職するという話だった。

夢よ、あれは夢だったのよ。
私は自分に言い聞かせると、教室に向かった。
解散する雑踏をかき分け、進んで行く。

「あ、荒井さん……」

荒井さんは振り返ると無気味に笑った。
あれは、夢じゃない。
そう、始まりだったんだわ。


(新校舎END)

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