『4、ラブ・ロマンス』&『6、コメディ』【PS追加ENDいじめドキュメンタリー】 | ナノ
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『4、ラブ・ロマンス』



ラブ・ロマンスですか。
倉田さんて、ロマンチストなんですね。
僕は、ロマンスと名のつくものは嫌いです。
男たるもの、ロマンスにうつつを抜かしてはいけないと思うんです。
……まあ、その話は置いておきましょう。

実は、今回お話しするのは、この学校で作られた、コメディ映画についてなんです。



『6、コメディ』



コメディがお好きなんですか。
それでは、この学校で作られた、コメディ映画について話しましょうか。



※以下同文※



その映画を企画したのは、時田君という生徒でした。
一年の時に、僕と同じクラスだったんですけれどね。
時田君は倉田さんと同じ新聞部に所属していたんですよ。
そして、映画同好会のメンバーでもありました。

彼は報道関係の仕事を目指していたんですが、将来のためにと、かけもちをしていたんです。
当時、この学校ではいじめが多かったんですが、彼はそれに問題意識を感じ、ドキュメンタリーを作ろうとしたんです。

「この問題は報道に価する」
彼はそう意気込みました。
「高校生の視点でのいじめの実体」
そんな感じのものを目指したんです。

彼は隠しカメラで毎日、いじめの現場を撮影しました。
(ひどいな……)
心のなかでそう思いました。
しかし、彼はそのいじめをとめることはありませんでした。

まあ、氷山の一角を解決するより、この映画を完成させて根本的な問題を片付けた方が意義がある、そんな思いだったんでしょう。
彼はドキュメンタリーの対象を、あるいじめられっ子に絞りました。
それから毎日、その生活を追い続けたんです。

でも、不思議なもんで、始めはひどいなと思っていたいじめの現場も、だんだんただの被写体として見るようになっていました。

そんなある日、その生徒が屋上から飛び下り、自殺したんです。
時田君は、もちろんカメラで撮っていました。
その生徒は、落下中、時田君に気付くと、悲しそうにカメラを見たそうです。

そして、地面には彼の血が広がりました。
まあ、この時、時田君が何をしても自殺をとめることは出来なかったでしょう。
彼はこのドキュメンタリーを完成させ、公開しなくては、と思いました。

撮った映像をどう編集しようか。
彼は考えました。
そして映画同好会のメンバーに協力を頼み、コミカルな映画にすることにしたんです。
笑いの中で、問題を提示しよう、そう思いました。

彼は編集に入ったんです。
編集というのは魔術ですよね。
楽しげな曲や効果音、フイルムのつなぎなどで、いじめの陰惨な映像がコメディに仕上がるんですから。
同好会のメンバーの腕が確かだったということもありますが。

このコメディ映画は、文化祭のとき公開されました。
観客はずいぶん笑っていましたよ。
それが本当にあった悲劇だとも知らずに。
本当に恐ろしいのは、こういう大衆なのかもしれませんね。

フィクションだと思うと、人の不幸を笑えるんですから。
いえ、たとえ事実だとしても、笑うかもしれませんね。
僕はそんな気すらしましたよ。

映画の後、スタッフの紹介がありました。
観客の大きな拍手。
「すばらしいコメディでしたね」
そういった司会者に向かって、時田君は何かいおうとしました。
これは単なるコメディじゃない。

そんな気持ちがあったんでしょう。
でも、そのためらいはすぐに観客の歓声にかき消されました。
僕は時田君の気持ちが手にとるようにわかりましたよ。
ここで映画の真意を伝えたら、場がしらけてしまうのではないか。

歓声が文句に変わりはしないか……。
そして時田君は、観客の拍手に応えてにっこりと微笑んだんです。
大衆を前にすると、人の態度って変わるものなんですね。

その後時田君は、このコメディの第二弾を作ることになりました。
学校から制作費が出たとかで、いい機材を揃えようとしていましたよ。
楽しくてしょうがないといった感じでしたね。

彼の目的は、受ける映画を作ること、それのみになっていったんです。

そんなある日、不可解な事故が起こったんです。
彼の映画の編集に携わった友達が、次々と事故にあっていったんですよ。
それ以外にも、事故にあった生徒は多数でました。
交通事故や、体育の授業での怪我など、みんな命に別状はありませんでしたが。

時田君はもしや、と思いました。
彼は文化祭の時のスタッフノートや、観客の名簿を取り出すと、名前を調べてみたんです。
「やっぱり、ここに名前の書いてある人たちが事故にあっている」

このとき彼は、この映画の中心に自分がいることを考えもしませんでした。

時田君はビデオカメラを持つと、被害者にインタビューをしに行こうとしたんです。
その時、何かの気配を感じ、彼は振り向きました。

「き、君は……」
コメディ映画の第一弾で撮った、自殺した生徒が立っていました。
時田君は、恐怖でその場に座り込んだんです。
「お前は、何のためにあの映画を作ったんだ?」

生徒の霊がいいました。
「今は、どういう映画を作っているんだ?」
青白い顔をした霊は、時田君に手をのばしてきます。
時田君は何もいえませんでした。
恐怖で眉間が暑くなり、涙が出てきます。

霊は、時田君の手にあったビデオカメラに触れました。
そして……………。

次の日、時田君は新聞部の部室で死んでいたんです。
この、新聞部の部室でね。
死体については語らないほうがいいでしょう。
あなたが今日の夕食を、食べられなくなってしまうかもしれませんから。
かなり無残な死に方だった、とだけいっておきます。

時田君が死んだのは、自殺した生徒の怨みだったのでしょう。
でも、なぜいじめた生徒ではなく、映画を公開したり笑ったりした人を呪ったのでしょうか。
人の怨みって不思議ですね。
えっ、どうしてこの話を知っているかですって。

時田君の死後、僕はこの部屋でビデオテープを見つけたんですが、そのテープに彼の取材や死がコメディタッチで記録されていたんです。
その映像には悲しさや、恐怖なんて微塵もありませんでしたよ。

倉田さん、新聞部の活動は程々にしたほうがいいですよ。
この七不思議の企画も、たんなる冗談ではすまないネタですから。
僕の話は、これで終わりです。
それでは次の方、お願いします。


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