2、ない【END幽霊教室・お天道様々】 | ナノ
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あら、入ったことないの?

うふふ……。
いちおう立入禁止ですものね。
もっとも、この中の何人かは行ったことあるようだけど……。
あら、脅えてる人もいるわね。
安心して……。
皆さんのことは、先生たちには内緒にしておくわ。
私、嘘はつかないから。

……話に戻るわよ。

七瀬君は、美術室へ向かったわ。
「平気、平気。
ちっとも怖くなんかないぞ」
そう、自分自身に言い聞かせながらね。

暗く寂しい廊下を抜け、階段を下りて、渡り廊下を進み……。
何事もなく旧校舎にたどり着いたの。

美術室は二階の奥……。
もうすぐだったわ。
ところが……。
「…………?」

夜も遅いというのに、明かりのついている教室があったの。
……こんな時間まで授業?
それとも……。
僕と同じで、忘れ物を取りに来た人でもいるんだろうか……?
七瀬君は足音を忍ばせて、明かりのついている教室に近付いて行ったわ。

こっそり窓ガラス越しに中を覗くと、みんな熱心に授業を聞いている。
……授業中のようだ。
いったい、こんな時間に何の授業だろう?

七瀬君は、教室のドアの前でうろうろしていたわ。
するとね……。
「君……。
そんな所にいないで、中に入りなさい」
って、誰かに肩を叩かれたの。

振り返ると、そこには見覚えのある男の先生が立っていたわ。
「あっ、はい……」
先生に促されて、七瀬君はドアを開けようと手を伸ばした。
でもね……。

……変だ。
何かがおかしい……。
どうしても、納得できないことがあって、ドアを開ける気になれないの。

……この先生は、なんて名前だった?
どのクラスの先生だったっけ……?
確か…………。
肩に乗せられた先生の手は、ヒヤリと冷たい。
「どうしたんだね?」
先生は、七瀬君の顔を覗き込むようにして尋ねたわ。

その顔には確かに見覚えがあったの。

……そうだ、日本史の宮田先生だ。
一年の時教わった……。
でも…………。
「…………!!」
思わず七瀬君は、先生を擬視してしまったわ。
先生の顔は、不自然なまでに青白い。

確か、宮田先生は…………!
その時、先生の額から一筋の血が流れ落ちてきたの。
宮田先生は、去年……!!
七瀬君の目の前に立っていたのは、一年前に事故死したはずの先生だったの。

……まさかっ!!
驚いて教室の中を見ると、生徒たちの様子も変なのよ。

ずぶ濡れの生徒……。
泥だらけの生徒……。
どの顔も青白くて、生気がまったく感じられない。

……もうわかったわね。
そうよ。
七瀬君が迷いこんだのは、幽霊教室だったのよ。
幽霊教室……。
そこでは、この世に未練が多過ぎて成仏できない死者たちが、生きてる時にできなかったことを勉強しているというわ。

うふふふ……。
死んでからも勉強してるなんて、幽霊も大変ね。
でも、そこに迷いこんでしまった人間はもっと大変よ。

「うわぁーーーっ!!」
七瀬君は、思わず叫んでいた。
それがいけなかったの。
悲鳴を聞いて、教室の中の幽霊たちが七瀬君に気付いてしまったのよ。
……しまった!
そう思った時には遅かったの。

全員が一斉に七瀬君を見たわ。

逃げなきゃ……!!

七瀬君は、宮田先生の氷のような手を振り払うと、一目散に逃げ出した。
彼が駆け出すと同時に、教室にいた幽霊たちが追いかけて来たわ。
「待てよ!」
「君も仲間だろう?」
「一緒に行きましょうよ……」

誘うような、引きずり込むような不気味な声が、背後からまとわりついてくる。
……やめてくれ!
……やめてくれ!
……やめてくれ!
七瀬君は、耳をふさいで必死に走った。

転がるようにしながら階段を駆け下り、旧校舎を飛び出して……。

……もう少しで校門だ。
あそこまで逃げれば、きっと助かる
あと少し……。
もうちょっとだ……!
そう思った瞬間……。
「うわっ!」

七瀬君は、何かにつまずいて倒れてしまったの。
見ると、地面から生えた手がしっかりと彼の足首を掴んでる。
「話せっ!」
七瀬君は、必死に手を振りほどこうとしたわ。
幽霊たちは、もう間近に迫ってる。

……早く逃げないと、連れて行かれてしまう!
「えーい、放せよっ!
放してくれーっ!!」
そのまま、彼の意識は遠くなっていった…………。

……と、その時。
サァーッと辺りが明るくなったの。

…………夜が明けたのよ。
すると、朝日に溶け込むように、幽霊たちの姿は消えていったわ。
……助かったのか?
よ……かった…………。
そのまま、彼は気を失ってしまったわ。
……その利邦、

「あーあ、もう少しだったのに……」
という甲高い子供のような声を聞いたそうよ。

この後……。
七瀬君は気を失って倒れているところを、登校してきた生徒に発見されて助かったの。
でもね、助け起こされた時、七瀬君の身体はアザだらけだったそうよ。
身体中に、赤紫色の手形がベタベタと残っていたんですって。

彼はしばらくの間、アザと節々の痛みに悩まされた。
でも、命が無事だっただけでも感謝しないといけないわ。
彼が助かったのは、本当に奇跡に近かったのかもしれないわね。
あの時、あと一秒太陽が出るのが遅かったら、七瀬君は助からなかったと思うもの。

ふふ、けっこう多いのよ。
放課後の学校で行方不明になる人って……。
……ねえ、倉田さん。
これで、放課後の学校が危険だって意味がわかったでしょう?
夜が明けるまでの学校は、死者が勉強する場所なのよ。

迷い込んでしまった生きている人間は、有無をいわさず仲間にさせられてしまうの。
お友だちは多い方が寂しくないものね。
うふふふ……。
私の話はこれで終わりよ。

あら、もうこんな時間。
……魔の時刻だわ。
まだやっと二話目が終わったところなのに……。
ふふ……。

私たち、逃げられないわね。
七不思議は始まったばかりだもの……。
次は三話目ね。
誰が話してくれるのかしら……?

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