『1、はい』&『2、いいえ→2、ない』【END幽霊教室・忘れた!】 | ナノ
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『1、はい』



……そう。
あなたも、七瀬君と同じなのね。

面倒臭がり屋さん……?
メンド・クサガリーナちゃんね。
彼も、宿題をあきらめてしまったの。
学校へ画材を取りに戻るのも、次の日の朝早起きして学校で絵を仕上げるのも、どちらも面倒臭くてしょうがなかったのよ。

みんなに笑われた方が楽でいいやって……。
そう思ったら気が楽になったのかしら。

七瀬君は、早々と布団に入って眠ってしまったの。
……どれくらい眠った頃かしら。

「靖宏……。
起きなさい、靖宏ったら!」
七瀬君のお母さんの声だったわ。
……うーん、うるさいなぁ。
もう朝かよ……。
そう思って窓を見ると……?
窓の外は真っ暗。
「なんだよ、まだ夜じゃないか……」

「何いってるの。
あんたこれから補習があるんでしょ」
「補習……?」
「たった今、学校から連絡があったんだから。
忘れ物が多い生徒ばかりの補習で、来てないのはあんただけだって……」

……そんな補習あったかなぁ。
いや、あったかもしれない……。
誰かがいってた?
僕が忘れてただけで……。
「ほら、早く起きて。
さっさと行きなさい」
「……わかった」

まだ半分寝ぼけていた七瀬君はお母さんにいわれるまま、ぼんやりした頭のままで学校へ向かったわ。
そういえば、今、何時頃なんだろう……?
……そんなことを考えながらね。

月明かりの下で見る学校は、昼間とは全然違って見えたわ。
見慣れてるはずなのに、初めて訪れた場所のよう……。
シーンと静まり返った校舎が、闇の中でじっと息を殺してる、巨大な生き物のようにすら思えてきたの。

生暖かい風が頬を撫でるたびに、背筋に悪寒が走り、頭の隅で、引き返せって警告めいた声が聞こえる。

一瞬、七瀬君は引き返そうかとおもったわ。
でもね、その時、旧校舎の窓に明かりが見えたの。
……あそこが補習をやってる教室だな。
たくさんの人影が見える……。
なぁんだ、けっこうお仲間がいたんじゃないか。

そう思ったら、七瀬君たち急に元気になっちゃって……。
鼻歌を歌いながら、旧校舎へ入って行ったわ。

……ねえ、倉田さん。

あなた、旧校舎に入ったことはあるの……?


1、ある
2、ない



『1、ある』




あら、入ったことがあるの?
いけない子ね、あなたって……。
あそこは立入禁止なのよ。
先生に見つかったりしたら大変なんだから。

ふふふ……。
安心しなさいよ。
内緒にしておいてあげるわ。



『2、ない』



あら、入ったことないの?

うふふ……。
いちおう立入禁止ですものね。
もっとも、この中の何人かは行ったことあるようだけど……。
あら、脅えてる人もいるわね。
安心して……。
皆さんのことは、先生たちには内緒にしておくわ。
私、嘘はつかないから。



※以下同文※



今は立ち入り禁止の旧校舎だけど、この頃は、まだ授業が行われていたのよ。
美術や音楽のような、特別教室を使った授業を中心にね。
……話を続けましょうか。

七瀬君が教室についた時……。
すでに補習授業は始まっていたわ。
こっそり窓ガラス越しに中を覗くと、みんな熱心に授業を聞いている。
今、入ってもいいんだろうか……。
なんだか、邪魔してしまいそうな気がするなぁ……。

ふふふ……。
授業中の教室に入って行くのって、ちょっとどきどきするのよね。








『2、いいえ』→『2、ない』



あら、入ったことないの?

うふふ……。
いちおう立入禁止ですものね。
もっとも、この中の何人かは行ったことあるようだけど……。
あら、脅えてる人もいるわね。
安心して……。
皆さんのことは、先生たちには内緒にしておくわ。
私、嘘はつかないから。

……話に戻るわよ。

七瀬君は、美術室へ向かったわ。
「平気、平気。
ちっとも怖くなんかないぞ」
そう、自分自身に言い聞かせながらね。

暗く寂しい廊下を抜け、階段を下りて、渡り廊下を進み……。
何事もなく旧校舎にたどり着いたの。

美術室は二階の奥……。
もうすぐだったわ。
ところが……。
「…………?」

夜も遅いというのに、明かりのついている教室があったの。
……こんな時間まで授業?
それとも……。
僕と同じで、忘れ物を取りに来た人でもいるんだろうか……?
七瀬君は足音を忍ばせて、明かりのついている教室に近付いて行ったわ。

こっそり窓ガラス越しに中を覗くと、みんな熱心に授業を聞いている。
……授業中のようだ。
いったい、こんな時間に何の授業だろう?



■※以下同文※■



七瀬君は、教室のドアの前でうろうろしていたわ。
するとね……。
「君……。
そんな所にいないで、中に入りなさい」
って、誰かに肩を叩かれたの。

振り返ると、そこには見覚えのある男の先生が立っていたわ。
「あっ、はい……」
先生に促されて、七瀬君はドアを開けようと手を伸ばした。
でもね……。

……変だ。
何かがおかしい……。
どうしても、納得できないことがあって、ドアを開ける気になれないの。
……この先生は、なんて名前だった?
どのクラスの先生だったっけ……?
確か…………。
肩に乗せられた先生の手は、ヒヤリと冷たい。
「どうしたんだね?」
先生は、七瀬君の顔を覗き込むようにして尋ねたわ。

その顔には確かに見覚えがあったの。

……そうだ、日本史の宮田先生だ。
一年の時教わった……。
でも…………。
「…………!!」
思わず七瀬君は、先生を擬視してしまったわ。
先生の顔は、不自然なまでに青白い。

確か、宮田先生は…………!
その時、先生の額から一筋の血が流れ落ちてきたの。
宮田先生は、去年……!!
七瀬君の目の前に立っていたのは、一年前に事故死したはずの先生だったの。

……まさかっ!!
驚いて教室の中を見ると、生徒たちの様子も変なのよ。

ずぶ濡れの生徒……。
泥だらけの生徒……。
どの顔も青白くて、生気がまったく感じられない。

……もうわかったわね。
そうよ。
七瀬君が迷いこんだのは、幽霊教室だったのよ。
幽霊教室……。
そこでは、この世に未練が多過ぎて成仏できない死者たちが、生きてる時にできなかったことを勉強しているというわ。

うふふふ……。
死んでからも勉強してるなんて、幽霊も大変ね。
でも、そこに迷いこんでしまった人間はもっと大変よ。

「うわぁーーーっ!!」
七瀬君は、思わず叫んでいた。
それがいけなかったの。
悲鳴を聞いて、教室の中の幽霊たちが七瀬君に気付いてしまったのよ。
……しまった!
そう思った時には遅かったの。

全員が一斉に七瀬君を見たわ。

逃げなきゃ……!!

七瀬君は、宮田先生の氷のような手を振り払うと、一目散に逃げ出した。
彼が駆け出すと同時に、教室にいた幽霊たちが追いかけて来たわ。
「待てよ!」
「君も仲間だろう?」
「一緒に行きましょうよ……」

誘うような、引きずり込むような不気味な声が、背後からまとわりついてくる。
……やめてくれ!
……やめてくれ!
……やめてくれ!
七瀬君は、耳をふさいで必死に走った。

転がるようにしながら階段を駆け下り、旧校舎を飛び出して……。

……もう少しで校門だ。
あそこまで逃げれば、きっと助かる
あと少し……。
もうちょっとだ……!
そう思った瞬間……。
「うわっ!」

七瀬君は、何かにつまずいて倒れてしまったの。
見ると、地面から生えた手がしっかりと彼の足首を掴んでる。
「話せっ!」
七瀬君は、必死に手を振りほどこうとしたわ。
幽霊たちは、もう間近に迫ってる。

……早く逃げないと、連れて行かれてしまう!
「えーい、放せよっ!
放してくれーっ!!」
そのまま、彼の意識は遠くなっていった…………。

ちょうど、その頃……。
補習に行った七瀬君がなかなか帰って来ないから、彼の家では、ちょっとした騒ぎになっていたわ。
何度、学校に電話しても誰も出ない。
たとえ補習が終わった後だとしても、宿直の先生がいるはずなのにね。

(警察に連絡した方がいいのかしら……?)
心配になったお母さんが、そう思い始めていた時……。
「ただいま」
玄関で声がしたの。
七瀬君の声だったわ。
「おかえり……。
遅かったのね」

お母さんは、ほっとしながら玄関まで迎えに出たわ。
でも……。
玄関には誰もいなかった。
「靖宏……?」
お母さんは、外に出て七瀬君を捜したわ。
でも、どこにも七瀬君の姿はないの。
「靖宏……?

どこにいるの?」
お母さんは、もう一度七瀬君の名を呼んだ。
するとね、
「しまった!
忘れてきた……!!」
って、七瀬君の慌てたような声がしたそうよ。
それっきり、声はプッツリと跡絶えてしまったわ。

その瞬間、七瀬君の家の電話が鳴ったの。
電話は病院からだった。

七瀬君が学校の校門で倒れているのを、運よく通りかかった人が見つけて、病院へ連れていってくれたのよ。
彼……とくに大きな怪我をしていたわけじゃないけど、一時は仮死状態になっていたとか……。
ちょうど、お母さんが彼の声を聞いた頃よ。

うふふふ……。
あの時、彼のいった、
「忘れてきた」
って、自分の身体のことだったのね。
もう……本当に忘れんぼさんなんだから。

そうそう……。
不思議なことにね。
あの日、夜中の補習授業なんてなかったそうなの。
七瀬君の家にも、そんな連絡は入れてませんって……。
……ねえ、倉田さん。
これで、放課後の学校が危険だって意味がわかったでしょう?

夜が明けるまでの学校は、死者が勉強する場所なのよ。
迷い込んでしまった生きている人間は、有無をいわさず仲間にさせられてしまうの。
お友達は多い方が寂しくないものね。

うふふふ……。
でも、七瀬君は本当に残念だったわ。
いいお友だちになれると思ったのに……。
あと、もう少しって時に人が通りかかるなんて……。
……あら?
私、変なこといったわね。
ふふ、冗談よ。

気にしないで……。

ただ、幽霊教室の生徒たちが、そう思ってるだろうと思っただけなの。
びっくりしたんでしょう?
……ごめんなさいね。
なんとなくわかる気がするのよ。

七瀬君のように面倒臭がり屋さんで、忘れ物をしただけで宿題をあきらめてしまうような人って、死んだ後も勉強を続けてる幽霊教室の生徒から見れば、とても許せない存在なのよ。

……ふふ、そう思わない?
あら、そういえば倉田さんも面倒臭がり屋さんだったわね。
ふふふ……。
メンド・クサガリーナちゃん。
いいお友だちになれそうね、私たち……。
……ねえ、生きるのも面倒臭くない?

そんな命ならいらないでしょう……?
あら脅えてるの?
あなたって、本当に見ていて飽きないわ。
うふふふ……。
全部、私の冗談よ。
そういうことにしておきましょう……。
ねっ?

七不思議のことなら心配ないわ。
ほら、もう魔の時刻ですもの。
まだやっと二話目が終わったところ……。
七話目が終わる頃まで、私たちが無事でいられるかどうかなんて、誰にもわからないんだから……。
次は三話目ね。

誰が話してくれるのかしら……?


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